研究センターでのディスカッションは中身の濃いものとなり、日本の領土問題や中国軍などの動向、日米同盟、そして台湾の情勢などについて話し合った。

 今回は航空自衛隊員だけでなく海上自衛隊員の方々からも貴重な意見をいただいた。航空自衛隊員以外の方の話を頼んだのは、統合幕僚監部の設立(2006年)に見られたように、日本の安全保障の状況は空以外からの脅威が増えていることもあったからである。

 冷戦中のヨーロッパや、現在のウクライナ危機などで見られる主に陸と空からの脅威とは対照的に、中国や北朝鮮との紛争の際はまず海や空(そしてサイバー)での戦いが中心になるため、自衛隊の能力は別々に使うのではなく、それを統合して運用する必要がある。事実、日本以外の国はそう考えて準備をしている。

 ここ数年の人民解放軍による海と空からの脅威は「接近阻止・領域拒否」 (A2/AD) というドクトリンで表現される場合があり、それにアメリカは "Joint Concept for Access and Maneuver in the Global Commons" (今年1月までは 「エアシーバトル」と呼ばれた)と呼ばれる運用概念で対抗しているのである。

航空研究センターの隊員たちとのディスカッション

 一般的に自衛隊員と防衛問題を本音ベースで話し合える機会は限られているため、上の写真で見られるような環境で専門的、かつ、建設的な深い議論ができたのは極めて貴重な機会であった。

安保法制議論で聞かれる「的外れ」な意見

 自衛隊員の声は、国民に広く伝わらなくてはならない。世界の中で見ると日本では防衛問題に関する関心がまだまだ薄く、国民を守る組織や自衛隊員の役割に対しての理解が乏しい。今の日本の安保法改正の議論でもそれを感じる。そう思いながら後日、国会に赴いた。いわゆる「国防族」と呼ばれるであろう国会議員数人と面会し、日米同盟とガイドラインに沿った安保関連法案の審議を含む、日本の安全保障政策全般について話をした。