ネピドーとヤンゴン間の高速道路。重車両の姿はない
ヤンゴン郊外にある長距離バスターミナルの様子
 

 その理由については、高速道路の施工が良くないため重車両の走行による舗装の劣化を懸念したためとも、高速道路に並行しBOTによって整備された国道の通行量を確保するためとも言われている。

 そもそも高速道路とは、企業の立地の促進や観光の増進、物流の活発化により地域の社会・経済を活性化させるために整備されるものだ。

 例えば日本でも、高度成長期に高速道路などの高速交通体系が整備されたことにより、それまで日持ちのするイモやコメしか作っていなかった農村で野菜を栽培することが可能になったり、水揚げした鮮魚をその日のうちに都市部まで運べるようになり、農業や漁業の在り方に大きな変化が起きた。

 さらに、工業団地が地方に開設され、製造業の工場が相次いで地方に拠点を移したことで産業分布も流動化した。このように、元来、地域格差を是正する役割を担っているはずの300km超の高速道路に大型トラックを通さず、並行する一般国道を走らせるという事例は、世界を見ても聞いたことがない。

 不可思議さという意味では、この国の鉄道整備についても同じことが言える。

 幹線となる鉄道は英国植民地時代にほぼ完成したが、民主化運動が起きた国家法秩序回復評議会(SLORC)が政権を掌握した1988年以降、ミャンマー国鉄は少数民族との和解や国家統ーのために、鉄道や道路の地方延伸に特に力を入れるようになった。この時期に延伸された鉄道新線の総延長距離は2000km以上におよぶ。

 しかし、限りある予算ゆえに煽りを受け、政治的にも経済的にも最も重要な区間である既存幹線(ヤンゴン~ネピドー~マンダレー)の維持・更新のための投資が後回しにされた結果、走行速度の低下や遅延、脱線事故の頻発を招くことになった。

 現在、この620km区間は、時刻表どおりに走行できたとしても16時間を要する状況だ。運賃が非常に安いため利用者はいるものの、飛行機や高速バスと比較した場合、現状のままではとても太刀打ちできないだろう。