日本の反核運動もついに国際的な現実の厳しさに直面したようだ。広島、長崎の体験を基に核廃絶を叫んでいればこの世界から核兵器がなくなるという基本姿勢があまりに空疎であることが、改めて証明されようとしているのだ。
日本が経験した被爆の悲惨さは、もちろん全世界に向けて訴えられなければならない。人類史上、初めて核兵器の直接的な被害者となった広島や長崎の人たち、そして、その後継世代の人たちの実情や心情を世界にアピールし、将来に引き継いでいくことは日本の歴史的な使命とさえ言えるだろう。
しかし、それを踏まえたうえであえて述べるならば、日本のこれまでの反核運動は、国際社会で現実に存在する核兵器とその脅威によって否定されてしまったと言えよう。最近の2つの出来事によって、それが避けられない現実として被爆国の日本に突きつけられたのだ。
日本の被爆国としての訴えを否定する中国
第1にはこの5月、広島、長崎の被爆地としてのアピールに中国が正面から反対を表明したことだった。
ニュヨークの国連本部で開かれた「核拡散防止条約」(NPT)再検討会議の最終文書に、日本政府は「各国指導者に広島と長崎への訪問を呼びかける」という文言を入れることを求めた。もちろん核兵器の被害を訴え、核廃絶に役立てるという意図だった。この案には同会議で発言した約10カ国の代表のすべてが賛意を表した。