国際金融の世界では、対立する金融・為替政策が優位を得ようと競い合い、各国がゲームのルールに対する影響力を巡って戦う。結局のところ、投資家が利益を最大化しようと競い合うように、各国は国際的なルールと規範が自国に好都合なものにするために競い合うからだ。
国際的な経済体制――例えば固定為替相場の確立や共通通貨の採用など――に同意することが極めて政治的な判断であるのは、このためだ。
そして今日のアジアは幾多の政治的判断に直面している。
アジアでは、経済統合がホットな話題だ。巨大な地域貿易協定の「環太平洋経済連携協定(TPP)」交渉から中国主導の投資プラットフォームの確立――シルクロード基金や直近ではアジアインフラ投資銀行(AIIB)など――に至るまで、アジアはかつてないほど相互に関連し合うようになっている。
その結果、一部の観測筋は、金融統合の強化という考え、場合によっては例えば中国人民元か日本円をベースにした固定為替相場制の確立にも大きな魅力を感じるかもしれない。
アジアの金融統合強化の是非
だが、筆者は、繁栄を促し、ショックから身を守るうえでは、現在主流の変動為替相場制が依然としてアジアにとって最大の望みだと主張したい。
変動為替相場制度を維持する利点を理解するためには、先進諸国の近年の成長軌道を見ればいい。2008年の経済危機の後、米国と英国は景気後退から逃れるために非伝統的な金融政策を採用することができた。日本は2012年終盤に、20年に及ぶ景気低迷から逃れるために似たような政策を採用した。