阪神・淡路大震災は典型的な都市型災害であり、交通網やライフラインの途絶下、官民のヘリコプターによる初めての大規模なヘリコプター救助活動が行われた。しかしながら初動での救命救助活動に十分に活用されず、関係機関の連携が不十分であるとの指摘を受けた。
阪神・淡路大震災での反省から初動対処能力を向上
その後、教訓を生かして法的な整備や初動の被災情報の共有等によって、関係機関の初動対処能力の向上が図られつつある。
新潟県中越地震災害は中山間地特有の災害であり、阪神・淡路大震災の教訓による法的整備などを行った後に発生した最初の大規模災害であったが、夜間悪天候でのヘリコプター情報収集や救助活動に課題を残した。
その後、岩手・宮城内陸地震では、山間地でのヘリコプターによる救助活動が各機関と地元自治体との連携によって初動から迅速に実施され、ヘリコプターによる救助活動の重要性が一段とクローズアップされた。
一方で、阪神・淡路大震災以降に強化された各機関のヘリコプター部隊は、近年の財政事情が反映して器材・人員ともに削減されており、その能力の低下が懸念されている。
特に阪神・淡路大震災直後に強化されたヘリコプターは、15年を経過し老朽化による更新期を迎え、要員も逐次交代期に来ている。
財政事情の悪化とともに、これら危機管理能力も削減の対象とされ、初動対処能力の充実維持に関して十分な配慮がされていないように見える。
危惧される東南海・南海地震のような巨大地震が生起した場合には、広域にわたる官民総力を挙げたヘリコプターによる初動の救助活動を行う必要がある。首都直下型および東南海・南海地震対処を例に課題を検討する。
1. 近い将来危惧される巨大地震・津波災害
平成22(2010)年防災白書によれば、近い将来発生が危惧される大規模災害の被害想定は甚大なものと予想されている。
図1*1は「大規模地震対策の概要」である。その中で被害の規模は阪神・淡路大震災の数倍以上であり、極めて広い地域にわたって発生するものと見積もられている。