「廃棄処分を免れたばかりの食材」と記された広告(画像提供:Instock)

 リサイクル品や、オーガニック衣料品を日常的に使うのはもちろんのこと、人口10万人以上の都市であれば電気自動車の充電ポイントが1500機は常備されているなど、国民の環境保全意識が年々高まりつつあるオランダ。

 衣食住、その中でも特に食に関しては、「エコフレンドリー」な傾向に拍車がかかっており、全国のレストランで使用される食材のほぼ70%が、有機栽培によるものといわれている。

エコ・フュージョン料理のルーツ

 オランダでは、有機栽培食材をメインに使った料理のことをエコ・フュージョン料理と呼んでいる。

 フュージョン料理とは一般に、各国独自の料理が持つ要素を融合し、自由な発想で調理されるものを指すが、もともとオランダには、この手の料理が主流となる基盤があった。

 輸出業が盛んなオランダは他国との接触が密であり、元オランダ領だったインドネシアやスリナム共和国をはじめとする各国の食文化が本土に伝わった歴史的背景を持つ。

日本料理からインスピレーションを受けたエコ・フュージョン料理も(画像提供:Eet.nl)

 さらに、労働移民としてのイタリア人、トルコ人、モロッコ人、ギリシア人らにより持ち込まれた地元料理など、さまざまな要素を含む食文化が融合する要素が、充分に揃っていたのだ。

 このフュージョン料理がオランダのグルメ界に定着した理由は、前回の『味だけで勝負しない、アイデア満載のレストラン』で述べた、ダッチ・ヌーベルキュイジーヌの普及と関係がある。

 本家本元のヌーベルキュイジーヌに触発されたオランダ人シェフらは、自国が接触を持った諸外国の料理を融合し、オランダでは未知だったフュージョン料理というカテゴリを作り、独創的なメニューを次々に発表するようになる。これが、好奇心旺盛な人びとから好評を博することになったというわけだ。