イタリアにはパスタにピザ、インドはカレーやタンドリーチキン、そして日本なら寿司や照り焼き、という具合に、各国は国を代表する料理やレシピがあるだろう。

 しかし、ことオランダに関しては、それが当てはまらない気がする。オランダ人に尋ねてみても、「典型的なオランダ料理? ええと・・・」と、考え込む者も多い。どうもオランダは、食文化が豊かでないような気さえしてくるほどだ。

 1960年代から70年代にかけて、オランダのレストランで出される料理のフルコースと言えば、分厚いステーキにバターたっぷりのグレービーソース、つけあわせはせいぜい粉吹きイモと温野菜程度だった。素朴な良さはあるが、見た目も味も、まったく垢抜けていなかったと言えるだろう。

垢抜けないオランダ料理からのレベルアップを目指した80年代

 食に関する考え方が非常にオーソドックスで、目新しいものを取り入れることに積極的でなかった当時のオランダ人たちは、従来にはないスタイルの斬新な料理を世に送り出していた他の欧州諸国に大きく差をつけられた形になった。

 たとえば、フランス料理界で当時巻き起こったヌーベルキュイジーヌの流行にさえ距離を置いたため、グルメ界への出遅れ感はどうしても拭えなかったと言えそうだ。

レストランで出される過去を代表するような料理。盛り付け方に注目(画像提供:Ad.nl)