本記事は1月27日付フィスコ企業調査レポート(鴻池運輸)を転載したものです。
執筆 客員アナリスト 寺島 昇

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主要顧客の業務回復、内部効率化に取り組み増収増益に

 鴻池運輸<9025>は2013年3月に上場した企業だが、創業は1880年と古い。社名に運輸がついているが、主たる業務は単なる運輸事業ではなく得意先の工場内・構内で各種の業務を請負う「複合ソリューション事業」である。主要顧客とは50年以上の取引が続いており、顧客からの信頼は厚く、これが特色、強みともなっている。

 2015年3月期の第2四半期累計決算は、売上高121,175百万円(前年同期比5.6%増)、営業利益5,120百万円(同21.3%増)、経常利益5,182百万円(同18.6%増)、四半期純利益2,966百万円(同15.5%増)となった。内需が回復傾向にあったことから顧客である製造業の生産が回復し、製造工程請負業務が増加したことなどから増収増益となった。

 2015年3月通期の業績は売上高243,700百万円(前期比5.3%増)、営業利益9,600百万円(同20.9%増)、経常利益9,400百万円(同17.4%増)、当期純利益5,400百万円(同23.6%増)と予想されている。売上高の回復に加えて、全社を挙げて収益性改善に取り組んでおり、利益率の大幅改善を見込んでいる点は注目に値する。

 中長期計画の第1ステップとして2018年3月期に売上高300,000百万円、営業利益15,000百万円を目標に掲げている。この数値目標の達成は物流ネットワークの強化や注力分野における受託拡大などの重点取り組み事項の成否によって左右されるが、企業体質の改善に取り組む姿勢は評価できる。今後の動向に注目したい。

Check Point

●鉄鋼、食品大手が顧客、複合ソリューション事業が主力
●通期大幅な増収増益見込みだが、期初予想を変えず保守的予想
●18/3期に売上高3,000億、営業利益150億を目指す

会社概要

運輸業から業務範囲を拡大、主要顧客とは長い取引関係

(1)沿革

 同社の創業は古く、1880年にさかのぼる。創業者である鴻池忠治郎(こうのいけちゅうじろう)氏が大阪、伝法の地(現在の此花区)において運輸業を開始したのが始まりである。その後1945年には法人として鴻池運輸が設立され、1900年には日本鋳鋼所(現在の新日鐵住金<5401>)の荷役と運搬作業を請負う「工場構内請負業務」を開始した。さらに1951年には食品分野において「工場構内請負業務」を開始、1953年には寿屋(現在のサントリー酒類)から工場構内作業を受注した。これらの「工場構内請負業務」が現在の「複合ソリューション事業」(詳細後述)の源流となっており、現在でもこれらの鉄鋼及び食品メーカーは、同社の主要顧客となっている。

 その後1962年には倉庫業、1963年には海上貨物運送事業、1979年には航空貨物運送事業、1985年には定温物流事業、1991年には空港関連事業、1994年には医療関連事業と、提供サービスや業務範囲を順次拡大させていった。さらに1984年には初の海外拠点としてシンガポールに現地法人を設立し、その後も海外展開を加速化させている。2013年3月、創業134年目にして東証1部に株式を新規上場した。