昨年あたりから急に「IoT」という言葉を耳にするようになった。IoTとはモノのインターネット(Internet of Things)の略語である。

 あらゆる機器がインターネットにつながり、機器同士が情報をやり取りするようになる。そこから新しいサービスが生まれ、今までにないビジネスが立ち上がり、人々の暮らしはより便利で快適になるという。調査会社のガートナーは、2020年までには世界の約260億ユニットのデバイスがインターネットにつながると予測している。またIDCは、世界のIoT関連の市場は2013年の1兆3000億ドルから2020年には3兆400億ドルにまで拡大すると見る(「世界IoT市場予測を発表」)。

 ここに来て急にIoTが取り沙汰されるようになったのはなぜか。今までの「ユビキタスコンピューティング」や「M2M(Machine to Machine)」とどう違うのか。2014年を「IoT元年」と位置づけIoTビジネス推進室を立ち上げた富士通を訪れ、IoTの実体とIoTビジネスへの取り組みについて話を聞いた。

IoT時代の到来はビジネス面、社会面の要因が大きい

──IoTの概念はどこが新しいのでしょうか。

大澤達蔵氏(以下、敬称略) IoTは厳密な定義が決まっているわけではありません。各ベンダーや調査会社などが自分たちでそれぞれ定義している状況です。いわゆる“バズワード”と言ってよいでしょう。

 1980年代からユビキタスという言葉がありますが、IoTとの間に概念的には違いはありません。マセチューセッツ工科大学Auto-IDセンターの共同創設者である、ケビン・アシュトン氏が「IoT」という言葉を初めて使ったのは99年です。ちょうどネットバブルの頃で、当社も2000年に「Everything of the Internet」という似たような概念を提唱しています。最近のM2Mという言葉も、基本的には変わらない。だから、IoTは概念としては古くからあるということです。

──IoTが急に叫ばれるようになったのは、技術面でなにかイノベーションがあったということですか?