政府は、将来戦闘機の国産化を推進するという方向性を打ち出した。航空自衛隊発足以来60年、国策として、その機運が生まれたことに賛意を表し応援したい。国家防衛の主力となる装備は自らの技術で製造、装備、運用するのが大原則である。

日本期待の実証機「心神」

先進技術実証機(ATD)

 将来戦闘機の第1歩として、本年、先進技術実証機(ATD―Adovanced Technological Demonstrator)が初飛行する。研究費用として400億円あまりが計上されている。

 実証機の愛称は「心神」という。心神とは、富士山の別名とも言われ、実証機を日本の霊峰になぞらえて、このプロジェクトに形だけではなく日本の魂を注ぐという開発者たちの意気込みが、ひしひしと伝わってくる。

 実証機の目的は試験用「エンジン」のテストである。これは、将来戦闘機のモデルになるもので、セラミック複合材を世界に先駆けて使用した高圧タービン、燃料装置などを含んだ軽量、小型で、かつ推力の高いエンジンを目指す。

 太平洋戦争前、我が国は、世界最高水準の「零式艦上戦闘機」「1式戦闘機(隼)」を開発した歴史を持つ。ともに操縦性、武装、航続距離に優れた戦闘機ではあったが、防護性は優先順位が低かった。

 その原因はエンジン性能にあった。

 1000馬力級のエンジンに相応する戦闘機では機体を軽量化せざるを得ず、燃料タンクの防弾、操縦者の防護などは犠牲にされた。戦争中、エンジンの開発、改良に取り組んだが、成功せず、米軍の2000馬力級の戦闘機に後れを取ることになった。