「日本のアニメをもっともっと世界に広げたい」という、日本人にはありがたいベンチャー企業が米サンフランシスコ市にある。

 社名はクランチロール。米国の寿司店メニューで人気がある巻き寿司の種類のことで、社名からして日本好きを前面に出している。

 同名のウェブサイトで展開する同社のサービスの中身はひと言でいうと、SNSとアニメ動画配信を合体させたもの。

カリフォルニア大学出身の4人が創業

 クランチロール(米国)のウェブサイト

 従来はユーチューブのように利用者による投稿動画が多かったが、2009年1月8日に個人の自作以外の動画投稿の受け入れをストップし、権利者から許諾の取れていない動画はすべて削除した。

 その後は著作権などの権利を持つコンテンツ保有者が公式に字幕付きアニメ動画を供給・配信。限定配信期間が明けた動画は利用者同士がコメントを付けながら自由に共有する仕組みにした。

 同社は元々、カリフォルニア大学バークリー校出身の共同創業者4人が趣味で作って運営していたアニメ動画の投稿・共有サイトだった。

 欧米やアジア諸国には日本アニメのファンがたくさんいるのに、日本国外では新しい作品がなかなか見られない。そこで、一般個人からアニメ投稿動画を広く募ることでそれを可能にしようという発想だった。

権利侵害を排除したことで急成長軌道に

 2006年夏にサイトを立ち上げると、利用者が自分で勝手に英語字幕を付けた投稿が殺到し、たちまち人気サイトに。これに目をつけたシリコンバレーのエンジェル投資家やベンチャーキャピタル(VC)から本格的に収益事業にすることを勧められ、2007年末にVC投資の受け入れを決めた。

 同社の最大の問題は他の動画投稿サイト同様、著作権などの権利侵害だった。VCは投資実行に際し、投稿による権利侵害を排除し、法的に問題のないサイトに生まれ変わるよう求めた模様だ。

 これを受け2008年に入ると日本の権利保有企業を中心に本格的に許諾交渉を展開。春にはアニメ大手で東証マザーズ上場のGDHや「アキバナナ」を運営するジー・アイ・ジェーン(本社・東京)などの許諾を獲得した。

 この秋には2009年1月の未許諾動画投稿の停止による完全合法化の方針を決断。アニメ最大手の東映アニメーション、アニメのテレビ放映実績が豊富なテレビ東京と相次いでコンテンツ利用契約を結んだ。