『21世紀の資本(論)』で欧米で論争を引き起こしているトマ・ピケティ(1971年生)パリ経済学校教授が韓国でちょっとしたブームになっている。雑誌や新聞の記事やセミナーが相次いでいる。9月12日には、日本よりも一足早く翻訳本も出版になった。
2014年9月19日午前9時前。ソウル中心部にあるホテル新羅の正面玄関には、続々と黒塗りの高級車が到着した。
「1%対99%」と題した講演会、韓国経済界を代表する名士が殺到
大企業CEO(最高経営責任者)、銀行トップ、著名大学教授、経済官庁の高官など韓国の産業界、経済界を代表する「名士たち」が次々と2階に向かう。国会議員の姿もある。
平日の午前中に開かれたのは、大手経済紙「毎日経済新聞」が主催したトマ・ピケティ教授の講演会だった。ホテル最大の宴会場には650の座席が準備されたがあっという間に満席になった。すごい人気ぶりだ。
この日の講演会と、大学教授などの質問に答える討論会は「1%対99%」という刺激的なタイトルが付いていた。
ピケティ教授の講演は約1時間弱。
内容は、ほとんどが本の説明で、特に1930年代以降の欧米、日本について、経済成長率を資本収益率が上回り、所得の不均衡が進んだことをデータを見せながら説明してみせた。
講演の冒頭でピケティ教授は、「今回の本は、執筆時点でデータがなく、韓国については分析できていない。改訂版には盛り込みたい」と語った。
「韓国も所得不均衡解消のために累進課税の強化を」
その上で、韓国については、「米国ほどではないが、所得の偏在が日本や欧州以上のペースで進んだ」と説明した。
「所得の不均衡」を解消するための処方箋としてピケティ教授は講演でも「累進課税の導入による高所得者への課税強化」とそれによって得た税収を教育投資に振り向けることの重要性を繰り返し強調した。