「韓国にはどうして、サムスン電子や現代自動車、ポスコのようなグローバル企業があるのに、強い銀行がないのか」。韓国の産業界からいつも出る不満だが、「これでは仕方がない」と考えさせられるような事態が起きた。大手銀行で持ち株会社会長と銀行長(頭取)のすさまじいバトルが起き、両ポストともに空席になってしまったのだ。
2014年9月26日、韓国4大銀行の1つである国民(KB)銀行を傘下に置くKB金融持ち株会社と、国民銀行の理事(取締役)会がそれぞれ開かれた。
これまでなら、それぞれの理事会にいるはずだったKB金融持ち株会社の会長と、国民銀行の銀行長の席は、この日、空席のままだった。
2014年9月に、銀行長は辞任し、会長は理事会で「解任」されてしまったからだ。
「水と油」のトップ2人
KB金融持ち株会社の理事会では、次期会長の選出などに関して議論し、10月末までに選任作業を終え、11月の臨時株主総会で選出することなどが話し合われたようだ。
2カ月前後、トップ空席が続くことになる。
いったい何が起きたのか。
ひと言で言えば、持ち株会社の会長と、銀行長が壮絶なバトルを演じ、金融当局を巻き込んだ混乱劇の末、2人とも銀行を去ることになったのだ。
事の発端は、2013年7月に、「水と油」の2人が、持ち株会社の会長と銀行長に就任したことだ。
KB金融持ち株会社の会長に就任した林英鹿(イム・ヨンロク=1955年生)氏は、苦学の末、ソウル大に進んだ。行政考試(上級公務員試験)に合格して経済官僚になり、順調に出世を続け、財政経済部の事務次官に上り詰めた超エリート官僚出身だ。
2010年にKB金融持ち株会社の社長に就任し、2013年には会長になった。
一方、国民銀行の銀行長に就任した李建鎬(イ・ゴンホ=1959年生)氏は、比較的裕福な家庭で育ったという。ソウル大を卒業後、米ミネソタ大学で経済博士号を取得した。リスク管理の専門家として韓国の金融界では有名で、大手都市銀行のリスク管理本部長(役員)や国策研究機関である韓国開発研究院(KDI)の教授などを歴任した。