カーナビは、米軍が世界に展開する部隊を指揮するために開発したGPS(全地球位置システム)が民間に開放され、活用されるようになった結果である。
車いすや杖を持った高齢者の乗り降りを容易にするために、バスはほとんどがノン・ステップになり、同時に油圧で乗降口を下げるニーリング・システム(ニールは膝まずくこと)を採用している。
これは戦車が移動中も地形の凹凸に関わりなく命中精度を維持するために開発された技術の応用である。
「想定外」の次は「抑止力」だ
軍事技術ばかりでなく、今日では軍事用語が一般社会、就中スポーツ界に浸透している。ストライク(一撃を食らわす)やシュート(矢を射る・弾丸を撃つ)などは野球やサッカーに特化され、本来軍事用語であることなど念頭にもない。
東日本大震災では「想定外」という言葉が多用された。国民には馴染みの薄い用語であったが、国家の安全に関わっている軍事関係者には日常茶飯事的に使われてきたものである。
「想定外」も今では完全に一般用語となり、市民も「想定外であってはいけませんよね」などと容易に使うようになった。先日の豪雨による広島の災害は想定外であったが、極力想定内にすることで、こうした災害にも事前の対策がとれるようになる。
先の国会では「集団的自衛権の行使容認」が最大の論点であった。しかし、朝日新聞を筆頭に度外れの反対キャンペーンが繰り広げられ、野党の一部も悪乗りして論戦はかみ合わなかった。
その要因は「抑止力」の問題でありながら、ほとんど抑止力が議論にならなかったからである。国家の存続よりも政党の存在を意識することが先にあり、「抑止力」を議論の中心に据えることができなかった。
与党協議の座長を務めた高村正彦自民党副総裁は「そもそもの原点は、日本が戦争に巻きこまれないための『抑止力強化』だ」と語り、「抑止力って『伝家の宝刀』なんですよ。あの家に宝刀があると思えば、ならず者は寄りつかない。『あるぞ』と思わせ、実際は抜かずに済ませるところが妙味」(「産経新聞」26.8.18)であると説明する。
北朝鮮に拉致された蓮池薫氏は『拉致と決断』で、協同農地と違って貴重な食糧をもたらしてくれる個人農地を盗難から防止する農民の涙ぐましい努力について、鉄条網、鳴子式警報、番犬などで守る方法が一般的であるが、「極めつきは鉄条網の最上部に被覆なしの電線を張り巡らせ、触ったら感電するように作った装置だった。(中略)停電の多い農村でどれくらいの抑止力になるのか、大いに疑問だった」と書いている。