『猿の惑星:新世紀(ライジング)』(2014)が、今週末から劇場公開される(一部先行公開済)。アルツハイマー病新薬の思わぬ効用で知能が向上した猿が反乱を起こし、ウィルスとしての薬の副作用で人類がダメージを受けた前作『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』(2011)の10年後が舞台。
共生か戦いかの選択を迫られる「猿」
森で平穏に暮らす猿と、荒廃した都市ですさんだ生活を送る人類の対立から、主人公たる猿のリーダー、シーザーが、共生か戦いか、選択を迫られる。
『猿の惑星』(1968)に始まるオリジナルシリーズのリブート版となるこれら2作は、「モーション・キャプチャー」と呼ばれる技術で、俳優の演技が猿の動きへと反映され、表情が生き生きしているのが大きな魅力。
そんなデジタル技術などなかった時代に製作されたオリジナルシリーズでも、猿のメイクアップは人々を魅了、1973年のテレビ初放映時には、解説の荻昌弘が猿のメイクアップで登場し話題をさらった。
その第1作は、猿に支配される人類という設定や、衝撃的なラストシーンなどから、映画史に残る作品とされる。
公開された1968年は、米国ではマーティン・ルーサー・キング牧師が暗殺され、フランスでは5月革命、ベトナムではソンミ村での米軍による村民虐殺があるなど混迷の時。
原作者ピエール・ブールによる風刺にみちた小説を、不条理世界を描く「ミステリーゾーン」で知られるロッド・サーリングと、かつて赤狩りの犠牲となり苦難の時代を送ったマイケル・ウィルソンが脚色したこの映画からは、病める世界へのメッセージが至る所で読み取れる。
映画は大ヒットとなり、当初予定のなかった続編がすぐさま作られることになった。そして、その『続 猿の惑星』(1970)では、地下に潜むミュータントと、戦争にはやるゴリラ軍を擁する猿との戦いのなか、核ミサイルが発射され、地球は消滅し、物語は終る。
それでも、さらなる続編『新・猿の惑星』(1971)は作られた。
消滅前、宇宙船でタイムスリップした猿が現代の地球へとやって来ていたのである。高度の知性を誇る猿は、裁判にかけられ人類に抹殺されてしまうが、妊娠していたメスが産んだシーザーという名の子供は生き延び、次なる続編『猿の惑星 征服』(1972)の主役となる。