8月9日から10日にかけて、菅内閣支持率などについてマスコミ数社が実施した世論調査の結果が発表された。それらの結果から浮かび上がってくるのは、いわば「民意のねじれ」である。

 菅内閣の支持率については各社調査とも大きな動きはなく、支持率よりも不支持率の方が高い状況にも変わりはない。具体的には、共同通信が支持38.7%・不支持44.8%、NHKが支持41%・不支持43%、朝日新聞が支持37%・不支持43%、読売新聞が支持44%・不支持46%である。

 しかし、興味深いことに、9月14日に行われる予定の民主党代表選については、菅直人代表の再選が望ましいという声が過半数に達している。菅内閣を支持していないが、このまま続投した方がよいと考える人が、少なからず存在していることになる。ここにまず、一種の「ねじれ」がある。

 NHK調査では、菅代表の再選が「望ましい」が21%、「どちらかといえば望ましい」が36%で、計57%。これに対し、「どちらかといえば望ましくない」が20%、「望ましくない」が14%だった。朝日新聞調査では、菅氏が民主党代表を「続けた方がよい」が56%で、「交代した方がよい」は27%。読売新聞調査では、菅代表の再選と首相としての続投に「賛成」が57%で、「反対」が30%。数字はほぼ揃っている。

 では、内閣を支持していないにもかかわらず菅氏の民主党代表再選・首相続投が望ましいと回答した人は、何を考えているのだろうか。今回の世論調査の結果から直接その答えを導き出すことはできないが、筆者の見方では、その背後にあるのはおそらく、財政再建といった経済政策の問題ではなく、鳩山由紀夫前首相・小沢一郎前民主党幹事長が退任する大きな原因になった、「政治とカネ」の問題であろう。

 菅首相が小沢前民主党幹事長と「距離を置いた方がよいと思いますか、連携した方がよいと思いますか」という朝日新聞調査の問いに対する回答は、「距離を置いた方がよい」が69%で、「連携した方がよい」は16%にとどまった。また、同じ調査で、「小沢さんが民主党内で影響力を強めることは、好ましいと思いますか、好ましくないと思いますか」という問いへの回答は、「好ましい」10%、「好ましくない」78%だった。

 財政再建を図る上で避けて通れない消費税率の引き上げ問題でも、世論には参院選前と同様、一種の「ねじれ」があると、筆者は受け止めている。「頭では必要性が分かっていても、実際の暮らし向きから考えると賛成しにくい」といった、総論賛成・各論反対のような空気である。

 読売新聞調査で、「財政再建や、社会保障制度を維持するために、消費税率の引き上げが必要だと思いますか」という質問に対し、「必要だ」が63%で、「そうは思わない」が32%。これに対し、朝日新聞調査で、「消費税率の引き上げに賛成ですか。反対ですか」と質問すると、「賛成」41%、「反対」47%という結果である。1カ月弱前の同社調査では「賛成」35%、「反対」54%だったので、賛成が少し増えてはいるものの、反対意見のほうが多い状況に変わりはない。

 ここにきて増額論が民主党内で強まっているとみられる子ども手当。政治の動きと世論の間にも、「ねじれ」がある。