「デング熱」が日本列島に上陸、猛威を振るっている。
国内感染者は戦後初で70年ぶりだが、先月末、菅(義偉)官房長官は「感染源を突き止め、感染拡大防止に努めるが、デング熱は重症化することは稀で、人から人への直接感染はない」と冷静な対応を求めた。
熱帯から温帯へ世界的な感染拡大が懸念されるデング熱
感染者は9日時点の届け出だけで88人に達するなど、今後100人の大台を超える可能性もあるが、「夏の風物詩で一過性のもの。ほとんどが大事にいたらない」と日本の報道を見る限り、どこか楽観視されているように見える。
実際、最初の“震源地”とされた代々木公園では、今夏、東南アジアや南米の文化や食のイベントが開催され、「外国人により運び込まれた可能性も」と憶測されるが、感染源のルートの確定は困難を極め、まさにミステリーだ。
デング熱は、確かに日本では聞き慣れない病気だが、世界ではマラリアに次ぎ多い昆虫媒介系感染症として恐れられている。WHOの調べでは、デング熱の感染は1960年代には1万6000件(年間)ほどでインドやフィリピンなど9カ国ぐらいだった。
しかし、現在は100カ国以上に増加、毎年約1億人の感染者を数え、WHOは「世界人口の約40%の25億人以上が感染するリスクを抱えている」と世界的な感染への劇的な拡大を懸念し、近年、警戒をさらに強めてきた。
特異なのは、これまでの熱帯や亜熱帯地域だけでなく、2010年にはクロアチアとフランスで、また2012年にもポルトガルのマデイラ島で感染が確認され、ヨーロッパの20カ国以上で、デングウイルスを媒介するネッタイシマカも発見されているのだ。
日本では昨年249件が報告され、いずれも海外で感染しているものだが、昨年日本に渡航したドイツ人女性がデング熱にかかっていたことが今年1月に発覚。日本で感染した疑いも出ており、厚生労働省も警戒を強めていた矢先だった(参考: 報道発表資料)。