「正義は勝つ」
耳慣れたフレーズである。米国のバラク・オバマ大統領が26日、イスラム教スンニ派の過激派組織「イスラム国」に対して使った言葉だ。
イスラム国をがんと呼んだオバマ大統領
その通りになればいいが、現実社会では必ずしも正義が勝つと限らない。意に反して不条理なことがまかり通ることの方が多いくらいだ。ただ同大統領からは何とか駆逐したいとの強い思いが伝わる。
発言の1週間ほど前、オバマ氏はイスラム国を「がん」とも呼んだ。特にイラクとシリアで急速に勢力を広げるイスラム国は、敵対するシーア派や異教徒の人間だけでなく、一般市民を殺傷してさえいる。社会の悪性腫瘍と言って差し支えない。
ここでイスラム国の概略を述べておきたい。
イスラム国の前身は2000年頃にさかのぼるスンニ派の過激派だ。その後、アルカイダと共闘した時期もあったが、2013年頃にアル・ヌスラ戦線と合併して、名称を「イラクとシリアのイスラム国(ISIS)」に変更した。
今年6月29日、ISISの指導者であるアブ・バクル・アル・バグダディ容疑者は自らをカリフ(正当な後継者)と名乗り、シリアとイラク両国での支配地域に新たなイスラム国家を樹立すると発表した。それがイスラム国だ。
国家と言っても、もちろん他国に認められた国ではない。言わば自己申告のテロリストの陣地に過ぎない。
彼らの行状はあまりにも過激だ。一例がある。7月下旬、内戦が過激さを増すシリア北部ラッカで、五十数人のシリア政府軍兵士を処刑スタイルで殺害した。拘束したまま殺害した後、首を切断している。遺体によっては頭部を串刺しにして路上にさらしもした。
イラク領内ではクルド人への迫害が激しく、米政府は8月8日、イラク北部の都市で限定的な空爆を行った。イスラム国の車両や迫撃砲をピンポイントで狙ったもので、それによってイスラム国が白旗を揚げるわけではないが、一定の効果が確認された。