近現代史研究家でジャーナリストの水間政憲氏をゲストに迎えた今回の『中山泰秀のやすトラダムス 』(6月29日放送/Kiss FM KOBEで毎週日曜24:00-25:00放送)。集団的自衛権の行使容認をめぐる議論や、日本と中国の歴史認識問題、教育問題などについて語った。

円借款を踏み倒した中国が商船三井に損害賠償を求める不思議

中山 今回は、近現代史研究家でジャーナリストの水間政憲さんにお話を伺います。
国会では集団的自衛権の行使容認をめぐる与党協議が大詰めを迎えています。

 毎日新聞が実施した世論調査によると、集団的自衛権を行使できるようにした場合、「他国の戦争に巻き込まれる恐れがある」と回答した人が71%に上ったそうですが、これについてどう思いますか。

水間 本当は「戦争に巻き込まれないための集団的自衛権」であり、毎日新聞にもその発想はあるはずなんです。にもかかわらずそれを報道しないのはおかしいと思いますね。

中国、南沙諸島で埋め立て フィリピンが写真公開

フィリピン外務省が公開した、中国が埋め立て工事を進めているとみられる南シナ海のジョンソン南礁(フィリピン名・マビニ礁、中国名・赤瓜礁) ©AFP/DEPARTMENT OF FOREIGN AFFAIRS〔AFPBB News

 フィリピンの事例を見るとよく分かります。かつてフィリピンから米国が撤退した後、ほどなくして南沙群島のミスチーフ環礁が中国に占拠されてしまいました。この例からも日本は、集団的自衛権と日米安全保障条約を一体のものとして考える必要があります。

中山 南シナ海ではベトナムと中国も領有権をめぐって対立しています。中国はこの海域を確保することで、米国本土に対してミサイルの威嚇ができるようになるため、何としても奪取しようとしている。また、中国はゴビ砂漠に軍事基地を設立し、ミサイル発射実験を行っているという情報も耳にします。

 こうした周到な準備を進めているのを見ると、日中の友好関係も大事ですが、彼らが片手で握手をしながらもう片手に包丁を持っていることも忘れるべきではありませんね。

水間 自国に利益があると判断したら、たとえ机の下で蹴り合っていても握手を求めてくるのが中国なんです。今後は、中国との経済的な結びつきを徐々に弱めていくことも日本にとって1つの安全保障と言えるのではないでしょうか。

 以前、戦後補償をめぐる中国の損害賠償訴訟で、日本の商船三井が上海海事法院(裁判所)に約40億円を供託金として支払いました。船舶の貸出契約は日中戦争前の1936年であり、中国側は対日賠償請求の放棄を盛り込んだ日中共同声明には反さないと主張しています。

 では中国は、1933年に日本が貸し付けていた総額約10億円(現在の約3兆円相当)の円借款を踏み倒した事実を、どう説明するのでしょうか。