全国の自治体病院で病床休止や診療科閉鎖、さらには閉院まで追い込まれるといったケースが相次ぐ中、岩手県藤沢町の国民健康保険藤沢町民病院は、16年間黒字経営を続けています。

 町に病院のない「医療崩壊」時代が25年間続いた後、地域医療の再生を成し遂げたばかりか、毎年多くの視察者が訪れて一様に驚く「健康と福祉の里」とは、どのようなものなのでしょうか。

経営と医療の質において驚くほどの充実ぶり

国民健康保険藤沢町立病院
〒029-3405
岩手県東磐井郡藤沢町藤沢字町裏52番地2

 東北新幹線「一関」駅から南部北上山系が連なる山間を西に向かって車で走ること約40分、緑の稲田が途切れて町に入ってしばらくすると、藤沢町の古びた役場と隣接して、国保藤沢町民病院があります。

 一見何の変哲もない病院に見えますが、ここは全国の自治体から地域医療のモデルとして、また若い研修医たちからも「憧れの地」として注目されている施設なのです。

 というのも、この病院は16年間にわたって毎年黒字経営を続け、累積黒字の一部を藤沢町の一般会計に低利で融資しているからです。

 多くの公立病院が自治体から財政援助を受けているのに、藤沢町では逆なのです。財政状況が悪化して目下再建中の藤沢町にとって貴重な収入源になっているというのですから、驚くばかりです。

 2006年には病院機能評価認定(一般A部門)を受け、また自治体立優良病院総務大臣表彰を受賞という実績を上げています。

 経営面だけではありません。医療の質という点でも、実に素晴らしいのです。

 藤沢町は、町全体で地域医療を育てる「健康と福祉の里」を標榜し、医療、保健、福祉が一体となって連携する「地域包括ケア」を行っています。その中核を担うのが藤沢町民病院です。

 それを象徴するように、病院を核として、周辺に特別養護老人ホーム光栄荘、老人保健施設、訪問看護ステーション、デイサービスセンター、グループホーム、居宅介護支援事業所の7施設が建っています。これらの施設は、地方公営企業法全部適用されて佐藤元美院長が管理者となって、相互に連携を取りながら運営されています。

 そのため藤沢町では、高齢の患者が体調を崩して医療が必要と判断されれば病院に入院し、治癒の具合によっては老健に、さらに良くなれば自宅や施設に戻って、次の患者を迎え入れるというシステムになっています。