世界的な株高、とりあえず順調な滑り出しのアベノミクス、人余りから人手不足へ・・・。長く暗いトンネルの中を通ってきた日本経済にもようやく復活の兆しが見え始めた。しかし、こうした時こそ企業にとって最も大切な時期と言える。

 波に乗ることができるか、それとも波に取り残されるか。世界の中にあって日本が、企業がどのようなポジションにあるのかをきちんと押さえた戦略がそれを決める。

 ではどのような戦略が必要になるのか。日本におけるマーケティングの第一人者、インテグレートの藤田康人CEO(最高経営責任者)にその処方箋を聞いた。

マシンガンvs竹槍――日本企業が勝てなくなった理由

THE REAL MARKETING 売れ続ける仕組みの本質』(藤田 康人著、宣伝会議、¥1600・税別)

川嶋 藤田さんは以前から日本企業のマーケティングの後進性に警鐘を鳴らしておられますね。

藤田 マーケティングには広義と狭義の定義がありますが、日本における多くのマーケティングは非常に狭義です。「マス広告+店頭販促=マーケティング」のような意識が強い。

 しかしグローバルでは、統合マーケティングと言われるIMC(インテグレーテッド・マーケティング・コミュニケーション)がスタンダードです。

 マーケティングというのは、昔は消費者と1対1だったのが、いわゆるマスマーケティングが米国で始まり、戦線がどんどん広がってしまった。その結果、営業マンがやっていることと店頭でやっていること、または広告で言っていることがぜんぜん合っていないという事態が生まれました。

 特にブランドというのはひとつの人格のようなものなので、発するメッセージがバラバラだと、あなた誰? みたいなことになってしまう。

 そこで、きちんと統合していきましょうということで始まったのがIMCという概念です。1990年代に米ノースウェスタン大学のドン・シュルツという先生が唱えたもので、当時は日本でも一時はブームになったんですが、あまり広がりませんでした。