日本の人口構成における「単身世帯(通称「おひとり様」)」は1678万5000世帯と、いまや全世帯における3割を占める状況だ。そして、そのうちの約3割に当たる479万1000世帯が65歳以上の高齢者の一人暮らしである(平成22年国勢調査:総務省統計局)。
可処分所得ベースで考えれば、生産年齢人口(15歳以上65歳未満)を消費のターゲットと捉えるのが通説だが、「少子高齢・人口減少社会」が現実となる中で、定年まで務め上げた退職金や貯蓄、限られた年金を持つ高齢者の所得は、消費の担い手として十分に影響力を持つ存在と言える。
それを具現するように、コンビニエンスストアでは、調理済み個包装の惣菜が販売され、最大手のセブン-イレブンは2015年2月期の連結決算で過去最高益を叩き出すなど、「高齢社会への売り場対応」が、消費拡大に重要な役割を果たしていることが窺える。
スーパーの生鮮売り場のミスマッチ
「野菜をとる」ことが「健康」に大切なことは皆が知っている。それでも、スーパー店頭の生鮮売り場の売り上げは右肩下がりに下がっている。この原因は何か。
家族4人暮らしが当たり前の時代であれば、レタスやキャベツを1個単位で購入することは問題がなかった。しかし、2人暮らしや単身世帯が増えれば、「多すぎる」量となってしまう。トマトより「ミニトマト」が嗜好されることや、ブロッコリーよりも「スティックセニョール(棒状になったブロッコリー)」が好まれるのは、そうした「世帯変化に必要な量や大きさ」が変わっていることに起因する。
これらを示すように、「平成25年 食糧・農業・農水白書」の「65歳以上の単身世帯における食糧消費支出の実質増減率(平成15[2003]年と平成25[2013]年の比較)」では、10年前と比べて生鮮食品はマイナス6.8%となる一方、飲料・酒類は27.6%増加になっている(下の図)。
(出典:平成25年度 食料・農業・農村白書)
先のコンビニやスーパーの惣菜売り場にある「調理食品」は9.5%の伸びを示している。「家庭で作るよりも完成品」を好み、「飲料・酒類」が高い伸びを示していることが変化の特徴と言える。