中国の最高指導者たちは自国の軍事力の拡大に懸命のようだが、その一方、国威の発揚にとって陰りや障害となり得る要因にも深刻な懸念を向けている。それらの気がかりとなる要因とは何なのか。米国の国防総省が6月5日にリポートを発表し、興味深い指摘を行っている。その内容を紹介しよう。
米国防総省が発表した「中国の軍事力と安全保障の展開に関する報告、2014年版」は、2001年からその作成と議会への送付が法律で義務づけられた年次報告書である。当初は「中国の軍事力報告」と名づけられていたが、オバマ政権になって現在のタイトルへと変えられた。オバマ政権のソフトな対中姿勢を反映したタイトル修正だった。
今回の報告も、中国が継続して推進する陸海空軍、そしてサイバー空間や宇宙での大規模な軍事能力増強について、具体的な兵器や作戦にまで触れて詳述していた。同報告は、中国の当面の戦略目標を「激烈な地域的有事に際して戦闘を実行し、短期に勝利するための軍事能力を高める」ことだと規定する。
その具体例として、まず「台湾海峡での衝突に備え、米軍を抑止し、撃破することも含めて」十分な戦闘能力を保持することを挙げる。さらに「人民解放軍は台湾有事以外にも南シナ海や東シナ海での有事への準備に重点をおくようになった」と述べる。同報告が東シナ海と南シナ海の有事をこれほど重点的に記したのは初めてである点に、日本側は留意すべきだろう。
中国に立ちふさがる6つの難題
さて、同報告でさらに注目したいのは、米国側が見た中国首脳陣の長期的な戦略である。