≪登場人物≫
大久保部長:何度も表彰を受けた営業畑一筋のやり手営業部長
親友 中村:大学時代からの親友。同業他社の経営企画部次長

*本記事に登場する登場人物は、実在する人物ではありません。
 

やり手の営業マンだけで、
チーム全体の成績を伸ばすのは困難

 大久保営業部長は、売上不振に悩んでいた。部下の動きが把握できず、誰に何をアドバイスすればよいのがわからなくなっているのだ。若いころ大久保部長は、やり手営業マンとしてならしていた。飛び込みや紹介で顧客を発掘し、見込みのありそうな顧客には粘り強くアプローチして成約につなげてきた。

その成果が評価されて、今の営業部長の地位につながっている。だから、成果を上げられない者が何を考え、どうアドバイスすればいいのかがわからないのかもしれない。

最近では、成果の上がらない者たちの指導に手をこまねいて、もっぱら好成績を出している者たちばかりと話しをするようになっている。彼らには自分に似たところが多く、話をしやすいからだ。成績の上がらない部下たちには、好成績を出している同僚からアドバイスを受けて、成長してほしいと思っているが、成績のよい営業マンほど忙しく、他の人に教える時間がない。

それに、彼らの成果がなければ営業部全体の成績をさらに下げてしまうから、同僚へのアドバイスより顧客対応を優先させるしかないと、大久保部長は考えている。しかし、このまま手をこまねいているわけにはいかない。大久保部長は、学生時代から頼りになった親友の中村に相談してみることにした。
 

「チーム全体の底上げ」をする4つのポイント

 中村のアドバイスは、「チーム全体を底上げする」というものだった。そして、そのために必要な4つのポイントを語ってくれた(図1)。

図1:チーム力を底上げする4つのポイント


どれも基本的で当たり前のことだ、と大久保部長は反論した。売れる営業マンのスキルやノウハウを共有しようにも、彼らにそれを整理して語らせるだけの時間がない。顧客の状況を把握するために、朝礼をしたり日報を書かせたりしている。売れない営業マンに理由を聞こうにも叱責を恐れてか自分を避けている印象がある。そんな売れない営業マンは失注も多いから、成約率を高めることも無理なのだ。

そんな大久保部長の反論に中村は、スマートフォンを取り出しながら、「CRMって聞いたことあるか?うちの会社では、SalesforceというCRMツールでチームの動きや顧客の情報を把握しているんだ。スマホでも使えるから便利だぞ」と、その画面を見せてくれた。アナログで管理するのではなく、ツールを使って仕組みを変えるべきだというのが、中村の主張だった。

CRMのことは、 大久保部長も知っていた。Customer Relationship Managementの略で、顧客との関係性を管理することだ。何年か前に提案を受けたことがあったが、システム導入によりこれまでの業務スタイルを変えるのが面倒だったので、そのときは導入しなかった。友人である中村の会社では、CRMツールの導入で着実に成果が上がっているらしい。検討の価値はあるな、と大久保部長は考えていた。
 

CRMツールを使ってチーム力を底上げする

  次の日から、大久保部長はCRMツールについて調べはじめた。そうすると、中村の言ったチーム力を底上げする4つのポイントが、CRMツールを利用することでクリアできることがわかってきた。すぐに利用できるという中村の薦めもあり「CRMでNo1製品のSalesforce」の導入を決定した。

●売れる営業マンのスキルやノウハウを共有する
CRMを使えば、顧客に対するアクションの全てを、提案資料などの文書とともに蓄積しておくことでができるようになり、営業の流れに沿って案件を振り返れるようになる。売れる営業マンの提案書や商談の進め方を共有できることに加え、Salesforce独自の特長でもある情報共有ツールをつかってタイムリーに適切なアドバイスができるようになる。カスタマーサポートなど他部門にも加わってもらうことで、別の角度から顧客のフィードバックを得ることもできる。

●顧客の状況を正確に把握する
顧客との取り引きが順調なのか、他社に乗り換えそうなのかなど、過去の商談状況から分析できるようになる。商談の進捗を管理することで、過去の類似ケースと比較して、今アプローチしている顧客との商談が順調に進むのか、あるいは他社に奪われるのかが予測できるようになる。より精度の高い売上見込を立てられるようになるし、他部門で行われている顧客への対応もわかってくる。

●売れない営業マンの理由を知る
商談に関する情報の全てを蓄積しておけるため、売れない営業マンは、「なぜ売れないのか」という分析ができる。売れない営業マンの無駄な行動や時間の浪費が、可視化できるようになる。そこを是正するとともに、売れる営業マンのノウハウを共有しアドバイスを受けることで、成果が上がってくるし、本人の自信やモチベーションにもつながっていく。

●成約率を高める(失注を減らす)
ノウハウを共有し、顧客の状況を知り、売れない営業マンの理由を知ることができれば、必然的に成約率も高まる。事前に失注しそうな商談を把握できれば、チームのメンバーから必要に応じたアドバイスを受けることも可能になる。これまでは、自分の力だけが頼りだったが、これからはメンバーの力も簡単に借りることができるようになる。これこそチーム営業の本質で、営業部全体の成績アップにつながる。

図2:営業部門が抱える課題CRMによる解決策
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図3:チームの商談を見える化し、簡単に把握できるSalesforceのダッシュボード機能
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チーム力の底上げをするのが、管理職の役割

  CRMツールを導入して数ヶ月が経った。営業部の全員にスマートフォンを持たせ、いつでもどこからでも顧客に関する情報の入力・参照が行え、メンバーからのアドバイスが受けられる状態になった。会議の時間は短縮され、そのための資料作成の負担も減り、その結果、顧客と接する時間が増えた。

情報共有ツール上では活発に発言が飛び交い、以前よりも部下同士のコミュニケーションも増えている。豊富な経験に基づくノウハウ、独自に学んできた知識、ユニークなアイデアなど、今までにない勢いで飛び交っている。誰が効果的なノウハウを提供したかも把握できるので、成績評価に加えることも可能だ。

図4:情報共有ツール「Chatter」を利用しスマートフォンから適切なアドバイスも可能
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顧客に関する情報がすべて蓄積されてきたことで、大久保部長は情報の分析に時間を割くようになり、部下へのアドバイスも的確さを増すようになった。チーム全体に活気がみなぎり、売上も上向いてきている。CRMツール導入によるチーム力の底上げにより、かつてやり手の営業マンだった大久保部長が、やり手の管理職と社内で呼ばれるようになる日も近い。