今、中国人の間で経済に関して最も話題に上るのが「連鎖破綻」だ。先日も上海の主婦らが集う食事会で、これが話題になった。彼女たちは子育てに一息ついた有閑主婦だが、株に投資をしていることもあり、企業情報には敏感だ。
5月中旬、地元メディアは「不動産開発大手が経営危機に瀕しており、傘下の上場企業に連鎖破綻のリスクがある」と報じ、警鐘を鳴らしていた。上海人主婦らは目の前の食事を平らげると、お茶をすすりながらこの話を始めた。
不動産開発大手とは「深セン市光耀地産集団」(以下、「光耀地産」)であり、「連鎖破綻の危機がある」と報じられた企業は、深セン市のA株上場企業「深セン新都酒店(以下、「新都酒店」)」(“酒店”とは“ホテル”を意味する)だ。
光耀地産は新都酒店の大株主である。光耀地産が外部から借り入れをする際に、新都酒店は担保を提供した。その際、地下金融から資金調達を行っている。ところが光耀地産は住宅が売れず資金繰りが悪化し、借金の返済が滞った。その結果、新都酒店も地下金融への返済が不能になった。光耀地産に提供した担保に瑕疵があったことも問題視されている。
光耀地産は、中国では“100強”に数えられる大手不動産デベロッパーである。ここ10年で躍進し、北京や上海などの一級都市、青島や杭州などの二級都市を中心に、全国各地を網羅する展開を行ってきた。行く先々で地方政府から土地を競り落とすためには、常に巨額の資金が必要であり、その資金調達のためには銀行や信託のみならず、高利貸しにまで手を出していたのだった。
これまでは、中国では目覚ましい経済成長が不動産販売の追い風となっていた。不動産の需要は増え続け、資金は滞ることなく回転していた。だが、ここに来て全国的に住宅が売れなくなった。光耀地産は、その“逆回転”の始まりとともに、多額の負債を抱えた。そして傘下の新都酒店までをも巻き添えにした。