米国連邦議会下院外交委員会のアジア太平洋小委員会が5月20日に開いた公聴会は、米国全体の中国への姿勢が著しく険悪化している様子をあらわにした。米国の中国への敵対傾向が明らかに強まり、米中間の「新冷戦」という言葉をも連想させるようになったのだ。 

 「中国はいまや全世界の平和と安定と繁栄への主要な脅威となったのです!」

 この公聴会ではこんな強硬な発言が出た。

 公聴会の主題は米国の「アジアへの旋回」である。このスローガンはオバマ政権が新政策として鳴り物入りで宣伝してきたが、どうも実態がはっきりしない。もしも安全保障面でアジアでの備えを重視するならば、当然、米軍の新たなアジア配備や、そのための国防予算の増額が見られるはずなのだが、見当たらない。オバマ政権の唱える「アジア最重視」も、レトリック(修辞)だけで実効措置が伴わない意図表明にすぎないという懸念がワシントンでも広がって久しい。

 今回の公聴会は、下院の多数派を占める共和党の主導によって開かれた。主眼は、オバマ政権のアジア政策の内容を点検することだった。アジア政策といっても、現時点でその主体は対中国政策に他ならない。

党派の別なく中国への態度が硬化

 中国を正面から敵視するような前述の過激な言葉を述べたのは共和党のベテラン議員のデーナ・ローラバッカー氏だった。同議員はかねて中国には厳しい政治家である。中国の軍事拡張や人権弾圧に対し、長年、激しい非難を表明してきた。

 一方、民主党のアミ・べラ議員からも、中国の南シナ海での強引な領土拡張の動きなどに対して、鋭い糾弾の声が発せられた。

 また公聴会の議長を務める共和党のスティーブ・チャボット・アジア太平洋小委員会委員長も、国際規範に違反する中国の行動に同様の激しい非難を表明した。