「世界最大の民主主義国家」インドの総選挙で、最大野党インド人民党(BJP)が単独過半数を獲得、同党を率いるナレンドラ・モディ・グジャラート州首相が、26日、次期首相に就任する。

 失速気味の経済、相変わらぬ汚職の蔓延。現状に不満を持つ人々の、州知事として経済発展をもたらした指導力に対する期待の表れだろう。

ヒンドゥー至上主義の新首相

インド・グジャラート州議会選、野党BJPが大勝

ナレンドラ・モディ新首相(写真は2007年)〔AFPBB News

 その一方で、懸念されるのが「宗教」。穏健な政教分離の国民会議に属するマンモハン・シン前首相はシク教徒、初のヒンドゥー教徒以外の首相だった。

 それに対し、BJP、そして新首相自らもヒンドゥー至上主義。「すべての人のための政治」を語っているものの、12年前の「過去」が少なからず不安を与える。

 2002年、聖地アヨーディヤ帰りのヒンドゥー教徒の乗った列車が、グジャラート州東部ゴドラで炎上した。瞬く間に広がる宗教暴動。犠牲者は1000人を超え、多くはイスラム教徒だった。適切な策を講じなかったとして、モディ州首相は批判を受けた。

ヒンドゥー寺院

 インド映画には、娯楽作でも宗教問題を背景とするものが多い。今も昔も身近な問題なのだ。

 1948年1月、宗教・言語・文化の多様性を誇る世俗国家建設の夢半ばで、マハトマ・ガンジーは、イスラム教徒に譲歩しすぎと考えるヒンドゥー教徒に暗殺された。

 1947年8月15日の英国からの独立も、宗教による分断、インドとパキスタンに分かれることで達成されたものだった。

 『トレイン・トゥ・パキスタン』(1998/日本未公開)は、そんな時代、真二つに分割されてしまったパンジャーブ地方の架空の小村が舞台。独立直後、インド外務省勤めだったという、3月に99歳で他界した作家クシュワント・シン原作の映画化である。

 そんな作品が描く村では、シク教徒が地主、イスラム教徒が労働者という構図のもと、人々は平和に暮らしている。しかし、ヒンドゥーとイスラムの対立など無縁のように思えたその地は、独立とともに国境の村となり、血みどろの争いが始まってしまう。