今回は、私の音楽の告知からお話を始めましょう。日が詰まっていますが、5月17日土曜日の夕刻、東京都調布市仙川の東京アートミュージアムで、現在開かれている「隣人:現代イスラエル写真展」のアーチスト・トークと、主催のプラザ・ファウンデーションによる私への委嘱作品の初演が行われます。

共生のアート展

 当日は、今回の写真展全体のキュレーションを担当したベテラン写真家レヴィヴァ・レゲヴ、報道写真から独自のパレスチナ和平・共生の可能性を鋭く抉る写真家のパヴェル・ヴォルバーグ、声楽の出身で、独自の質感を持って平面と立体の間で表現を模索する美術家ギディ・スミランスキー、米国籍で未来の化石とでも言うような多くの具体要素が結集した、特異な立体作品をインスタレーションする若い女性作家アマンダ・メールの、4人の作家のアーチストに、作品の目の前で話を聞きます。

企画を語るレヴィヴァ・レゲヴ。壁に映っている写真は、許可が出て生まれて初めてユダヤ側の海で海水浴するパレスチナの人々。イスラムのヴェールをかぶったまま水に浸かり、iPadでネットサーフィンする2013年夏。こういう現実を知っていただきたいのです

 今回の展覧会を一言で表すなら「共生のアート展」と表現できるかもしれません。詳しいことはどうぞ当日を楽しみにしていただければと思います。

 聞き手はプラザ・ファウンデーション理事長で作家の小中陽太郎さん、進行ならびに通訳を私、伊東が務めます。美術館の入場料は500円、今回はそれ以外に別途のチケットは必要ありません。

 アウトラインも先にお話してしまいましょう。冒頭、東京アートミュージアム本会場で、作品と作家の歓迎の意味を含め、若く才能にあふれたヴァイオリンの土岐祐奈さんによるJ.S.バッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ、アダージオの演奏から会を始めます。

 続いて理事長の小中さん、キュレーターのレヴィヴァさんから全体のイントロダクションとレヴィヴァさんご自身の作品に関するアーチストトークが終わったあと、一度会場を30メートル離れたギャラリーに移します。

 ギャラリーにはギディとアマンダの作品がインストールされており、各々作品の前でアーチストのギャラリートークを、と考えました。小一時間たったところで小休憩。

 後半、再び東京アートミュージアムに戻りますが、ギャラリートークを挟むと、どうしても戻っていただくのに時間がかかります。

 そこでというのでもないのですが、後半冒頭も土岐祐奈さんのヴァイオリンでバッハ、無伴奏ヴァイオリンソナタからフーガを演奏し、入場に間に合わなかった方は恐縮ですが演奏中はお入りいただけないというルールにしようと思っています。むろんギャラリーで作品と長く対峙したい、という方は、そちらに時間を使っていただいて構いません。

安藤忠雄の空間を移動しながら

 後半のトーク、パヴェル・ヴォルバーグの報道的な観点を含む作品を囲みながら、4人のアーチスト皆に話を振りながら、今日のイスラエルの置かれた状況について、セッショントーク的な展開になればと思っています。

 で、6時半過ぎ頃から、今回の展示に触発される形で私が書き下ろした、無伴奏ヴァイオリンのための「囁きの国境」לַחַשׁ-רפָסְ sfar-lakhashを土岐さんのヴァイオリンで世界初演します。

 東京アートミュージアムは、ご存知の方も多いと思いますが建築家・安藤忠雄の設計による特異な建物で、8メートルの吹き抜けに3階建て相当の特徴的なつくりをしています。