ウクライナで米露両国による新たな戦いが幕を開けた。
ロシアが3月にクリミア共和国とセヴァストポリ特別市を領土に加えてから1カ月もしないうちに、今度はウクライナのハリコフ、ドネツク両州が独立を宣言したのだ。
ロシアから見たウクライナ問題
日本を含めた欧米諸国では、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が強行的にクリミアを併合したと同時に、新たにウクライナの東部州の併合も画策していると見る。同大統領こそがウクライナ東部の動乱の首謀者であり、混乱の引き金を引いた張本人であると捉える。
けれどもロシア国内での見方は真逆だ。親米派のウクライナ新政権は武装集団「右派セクター」のロシア系住民の殺害を容認し、プーチン大統領は彼らを守るためにクリミア併合に踏み切ったと見ている。
ウクライナ新政権の裏には常に米国がいるというのがロシア側の解釈だ。
さらに未確認情報として、ロシア系住民の殺害を命じたのは米中央情報局(CIA)との話もある。少なくとも、プーチン大統領が同胞を守ろうとした行為は国民に歓迎され、支持率は60%から82%にまで跳ね上がった。
どちらに正当性があるのだろうか。
西側から見れば、ロシアによる本格的な領土拡張は1991年に旧ソ連が瓦解して以来初めてで、ヨーロッパでは「帝国主義的なかつてのロシア」の復活に脅威を感じる人が少なくない。これは体験的にヨーロッパ人の心中に擦り込まれた感情であり、陸続きであるからこその恐怖として無視できない事実である。
米陸軍は今後の実戦に備えるため、空挺部隊600人をポーランドとバルト3国に配備することを決め、4月23日には第1陣150人が現地に到着した。
さらに地中海にいた米誘導ミサイル駆逐艦トラクスタンを黒海に急派してもいる。米国はこれを予定の行動と発表したが、万が一に備えての動きであると見る方が自然だろう。
一方のロシアは、ウクライナに新政権が誕生する前から米国の息がかかった国家が国境の向こうにあることで、威圧感を受けていた。ウクライナは経済的に米国から多額の支援を受けていたからだ。