米国のオバマ大統領の日本来訪が内外をにぎわした。さて、この訪日の日本にとっての意味とはなんだったのか。

 総括として、安倍晋三首相が就任以来進めてきた一連の安全保障政策に対して、米国側が評価と賛同を表明したことは、やはり大きな成果と言えるだろう。その結果、日米同盟はより堅固になり、中国への抑止が高まったようにも見える。

 だがその一方、米国の尖閣諸島への日米安保条約の適用姿勢が“自動的な防衛行動”だと見なしてはならないことも確実のようである。

 今回はオバマ訪日の総括として、特に日本の大手の新聞やテレビがまず取り上げていない点を2つほど指摘しよう。

日本に対する「核の脅し」に米国が立ちはだかる

 4月25日に発表された日米共同声明で驚かされたのは、第1に日米両国が「米国の拡大抑止の重要性」を再確認したことだった。

 ここで言う拡大抑止とは、「核抑止」の効果を拡大して適用することを指す。

 核抑止とは、核兵器の威力によって相手の軍事的な恫喝や攻撃を抑え込むという軍事戦略を指す。核抑止は核兵器を保有する国家同士で機能する場合が多い。ある国が他の国に対して非核でも核でも軍事攻撃をかける、あるいは、かけるぞと脅す。すると標的となった国が、もしそんな動きを取るならば、こちらも核兵器を使って報復するぞという能力や意思を示す。相手はその核の威力を恐れて、当初考えていた攻撃や威嚇を差し控える。お互いが核による大量破壊を恐れ、そもそもの核兵器の使用を抑制するようになる。このメカニズムが核抑止である。

 米国の場合、自国の防衛のために核兵器の威力を示すのが通常の核抑止であり、日本のような同盟国の防衛のためにその核抑止を使うことが拡大抑止となる。核抑止が、自国の防衛から同盟国である他国の防衛にも拡大して適用されるというわけだ。この拡大抑止は「核の傘」とも呼ばれる。日米同盟では米国の「核の傘」が日本にも供されている。