先週はチャック・ヘーゲル米国防長官が就任後初めて訪中している。同長官は習近平国家主席ら中国側要人と米中「新型軍事関係」構築に向け精力的に会談を行ったと報じられた。
新型軍事関係?
いったい何だそれは? というわけで、今週のテーマはヘーゲル長官訪中と米中関係の行方である(文中敬称略)。
米中新型軍事関係
米中「新型大国関係」については本コラムでも昨年既に書いた。
要するに、米国は中国が大国であることを認め大国中国の国益を尊重すべしとする中国側と、中国は新興大国として既存の国際秩序を尊重し既存大国に軍事的挑戦を試みるなとする米側との、一種の「同床異夢」である。
2012年2月、「新型大国関係」を最初に米側に提案したのは当時の習近平国家副主席だった。米側も当初はこの種の表現を使うことを意識的に避けていたようだ。
ところが、昨年3月、当時NSC(National Security Council=国家安全保障会議)大統領補佐官だったトム・ドニロンが講演でこの表現に間接的に言及して以来、状況は大きく変わりつつある。
同年11月には後任のスーザン・ライス補佐官がアジア関係演説の中で、「When it comes to China, we seek to operationalize a new model of major power relations」と述べ、従来より踏み込んでいる。米側も遂に中国側の土俵に乗ったようだが、このライス演説、日本政府関係者の間ですこぶる評判が悪い。
一方、米中「新型軍事関係」なる用語が使われ始めた経緯は不明だ。
昨年5月5日に中国人民解放軍の機関紙「解放軍報」が関連論文を掲載したとの報道はある。恐らく中国側はその頃から米国に対し、軍事面でも「新型大国関係」に伴う新たな関係の構築を働きかけてきたのだろう。
まずはスローガンとなる中国製「新語」を外国に受け入れさせ、それを勝手に定義して主導権を握ろうとするやり方は、いかにも中国らしい。天晴れ(あっぱれ)だ。