中国はいわゆる歴史問題を日本抑えつけのために利用しているだけで、正しい歴史を語る資格はない――。このような分析が米国政府元高官によって明らかにされた。

 このところ政府全体を挙げて日本へ歴史問題非難を浴びせる中国の真の動機は、実は歴史の真実の探求でも正確性の追求でもなく、計算に満ちた対日戦略だというのである。日本側としても銘記すべき認識だろう。

日本への態度が険しくなったオバマ政権

 中国による歴史認識をめぐる日本攻撃がますますエスカレートしてきた。安倍晋三首相の靖国神社参拝では、多数の中国政府代表が「日本は軍国主義を復活させ、戦後体制を転覆しようとしている」と糾弾した。ドイツを訪問した習近平国家主席は、「日本軍は70年前、南京に侵略し、30万人以上もの中国人を殺すという残虐的な犯罪を働いた」と日本を非難した。習主席は「日本の侵略戦争で中国人3500万人が死傷した」という誇大な「歴史」をも語った。慰安婦問題でも中国は「日本軍の性的奴隷20万人」という非難を絶やしていない。いずれも、日本は歴史の真実を認めず、また過去の歴史上の悪行を反省も謝罪もしていないという糾弾が背後にある。

 中国側の、こうした「歴史」を持ち出しての日本攻撃に日本はどう対応すべきか。米国側では最近はオバマ政権が歴史問題に関して中国や韓国の主張に奇妙な理解や同情を示すようになった。その分、日本への態度が険しくなった。安倍首相の靖国参拝に対して「失望」を表明したことがその典型例である。

 日本の歴史問題での米国の対応は重要である。中国や韓国が歴史を使って、日本を叩く言動を官民で実行しても、日本側への実害には一定の限度があると言えよう。日本国民の大多数も、中韓両国からの糾弾には慣れっこになった観がある。

 だが米国の反応となると、また別となる。なにしろ日本が国家の安全保障を頼っている同盟相手である。それに、いまの米国がオバマ政権の内向き志向で国際的影響力を衰退させたとはいえ、まだまだ世界唯一のスーパーパワーなのだ。その米国がいわゆる歴史問題でもし完全に中国や韓国の味方となり、日本への非難を強めてくるとなると、肝心の同盟関係にも悪影響を与えかねない。そうした懸念はごく自然だろう。