日本では大きく報道されていないが、オランダのハーグで先週、米バラク・オバマ大統領が周囲を驚嘆させる発言をした。それにより、米国内では新たなテロ攻撃への警戒感が増したほどだ。

 第3回核安全保障サミットでのことだ。日本のメディアは、オバマ氏をはさんで安倍晋三首相と韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領の3者会談に主な関心を寄せた。ただ、その場で冷え込んだ日韓関係が修復されるわけもなく、両国にとっては象徴的な会談に終わった。

ロシアは米国の脅威とはなり得ない

米政府、NSAによる大規模通話データ収集の終了計画を明らかに

ハーグでの核安全保障サミットに出席したオバマ大統領〔AFPBB News

 本来、同サミットの焦点は核テロ対策であり、今回はロシアのクリミア編入問題が重要テーマだった。その席上、オバマ氏は次のように述べて物議を醸した。

 「ロシアは隣国に脅威を与える特定地域の強国です。ただそれは本当の強さとは呼べず、弱点の裏返しとも言えるのです。ましてや米国にとって、ロシアは脅威と呼べるだけの国ではありません。マンハッタンが(テロリストに)核攻撃される可能性の方が今の米国にとっては脅威なのです」

 オフレコ発言ではない。オバマ氏が自らの言葉で公式に語った内容だ。マンハッタンという地名まで出している。

 そこまで踏み込むと、米諜報機関がニューヨークへのテロ攻撃の情報をつかんでいるかに思える。だがすぐに、ホワイトハウスの国家安全保障会議(NSC)のケイトリン・ヘイデン報道官が、「機密情報をもとにした話ではなかった」と大統領の言説には裏が取れていないと述べた。

 しかし2001年9月11日以来、米国内には国際テロ組織によるニューヨーク再攻撃の脅威論が消えていない。しかもオバマ大統領は丁寧にも、「核兵器が爆発(nuclear weapon going off)」という表現まで使っている。

 報道官は米諜報機関のデータではないと述べるが、中央情報局(CIA)や国家安全保障局(NSA)などが入手する通信内容にはそうしたくだりがあっても不思議ではない。問題はその信憑性である。

 国際テロ組織アルカイダの元首領ウサマ・ビンラディンが2011年5月に殺害された後、アルカイダの脅威は確かに低下したが、米国の大都市、特にニューヨークがテロ攻撃の脅威にさらされていることに変わりはない。