ロシア軍がウクライナ国境付近に約2万人の兵力を張り付かせている状況のなか、3月23日、ウクライナのデシツァ外相は、「状況はますます緊迫しつつあり、戦争が勃発する可能性が高まっている」と発言した。
仮にロシア軍がウクライナに侵攻した場合、ウクライナ軍だけで撃退するのは、戦力の差から見て不可能だ。したがって、そのような事態になった場合、アメリカがどのように動くかが焦点になる。
現時点ではオバマ政権は明確に軍事介入を否定しており、もちろんいきなり米露の戦争という局面は考えにくいが、もしもロシアがさらなる軍事行動に出た場合、アメリカもある程度の軍事的対応を余儀なくされるだろう。
オバマ政権は“世界の警察”としての役割を放棄しており、アメリカの死活的利益がなければ、海外派兵には消極的だ。しかし、中東のシリアなどとは違い、軍事的に核大国であるロシアは、やはりアメリカにとっては最大の脅威であり、座視するわけにはいかない。
もしもウクライナにロシア軍が侵攻した場合、ウクライナはEU、アメリカ、そしてNATOに助けを求めるだろう。
ウクライナが最も政治的に関係が深いのはEUだが、EUだけで軍事的に対処することはまず不可能だ。EUにはEUとしての軍事機構が存在するものの、その実態は実質的にNATOの一部のようなものであり、EU単独で大規模な作戦を行うことは想定されていない。現実には、EUの軍事機構は平和維持活動などに限られている。
例えば「EU部隊」(EUFOR)はボスニアで活動しているが、これも基本的には平和維持活動のためのものであり、ロシア軍に対抗するようなものではない。
EUには他にも「EU戦闘群」(EUBG)という常設の待機部隊があって、各国(複数国合同含む)の持ち回りで1500人規模の部隊を2個編成しているが、こちらも大規模な作戦を想定したものではない。
また、「欧州合同軍」(ユーロコープス)という枠組みもあり、そこではNATOの一部としても活動することが想定されている「高度即応部隊」(HRF、6万人)あるいは「NATO対応部隊」(NRF、中核は「緊急即応部隊」〈IRF、1万6000人〉)が編成されている。
他にも、EUの枠組みとは別に、フランス、イタリア、スペイン、ポルトガルによる「欧州緊急作戦部隊」(EUROFOR)という軍事機構もある。しかし、いずれもロシア軍に対峙するような大規模な作戦を想定しておらず、結局はNATOが前面に出ざるを得ない。