3月21日、ロシアでクリミア編入の条約が批准され、ロシア国内での法的手続きが完了した。プーチン大統領によるクリミア奪取作戦が、これでとりあえずは一区切りついた形になる。

 それにしても電光石火の早業だった。ウクライナでの政変が2月22日。クリミアで親ロシア派が“決起”し、アクショノフ政権が発足したのが同27日。翌28日には“自警団”に扮したロシア軍が大々的に展開して、ほぼクリミア全土を制圧している。

 その後、3月16日にクリミアで親ロシア派政権が主導する住民投票が強行され、ウクライナからの分離独立とロシア編入が圧倒的な支持を獲得。これを受けて翌17日、クリミア議会が独立およびロシア編入の条約締結を可決すると、同日中にプーチン大統領もクリミアを独立国として承認し、ロシアへの編入を決定した。

 翌18日、プーチン大統領はクリミア政府と編入条約に調印。20日にはロシア下院で、翌21日に上院で批准され、プーチン大統領も署名したという流れだった。

プーチンに喝采を送るロシア国民

 こうした一連の“プーチン劇場”のなかでも、そのクライマックスは3月18日、クレムリンで政権幹部や議員らを前に行った約50分間の大演説だった。

 ウクライナの極右民族派からロシア系住民を守る決意や、かつてのNATOによる旧ユーゴでの空爆を引き合いに出したアメリカ批判などを熱っぽく語ったのだが、異様だったのは、出席者たちの熱狂的なプーチン礼賛ぶりである。演説会場を揺るがした拍手の渦は、ロシアでプーチン大統領が完全に“反米のカリスマ”となったことを証明していた。

 これは、ロシアの一般市民も似たようなものらしい。モスクワではプーチン大統領のクリミア政策に反対する少規模なデモもあったが、それよりもはるかに大々的なプーチン支持の大集会が赤の広場で盛大に行われた。各国際メディアのロシアからの報告でも、ロシア国民の多くは、こうした強権的なプーチン大統領の手法に拍手喝采を送っているようだ。プーチン大統領は自国内において、“アメリカに負けない強い指導者”かつ“世界のロシア系住民をネオナチから守る救世主”という自己イメージを作ることに成功したと言えるだろう。