STAP細胞の論文不正問題が取り沙汰されていますが、かなり見当違いなコメントも見かけ、社会一般に必ずしも基礎科学研究や論文公刊のモラルなどが周知されていないことを再確認する思いです。
ここで改めて思ってしまうのは「偽ベートーベン詐欺」との似た点と違う点です。こんなことを書くのは、国内外を問わず私くらいのものと思いますので、今回はこの観点からお話ししてみましょう。
いきなりご覧になる方に、私はクラシック系統の音楽を作り(作曲)また演奏(オペラや合奏の指揮)する仕事をしていますが、かつて大学・大学院では理学部で物理を学びました。
25歳のとき出光音楽賞などをもらって音楽の仕事が回るようになり、10年ほど現場で生活しましたが、テレビ朝日系列「新題名のない音楽会」の監督などしていた時期に2度目の博士課程に在籍、学位を取った後、ここ15年ほどは大学に音楽の研究室を持っています。
私のラボ(東京大学作曲指揮研究室)は、一線の創造・演奏のプロジェクトと並行して、必要な測定装置は自作して音楽音場の計測やその脳認知などを扱っており、科研費などのプロジェクトにも責任を持っています。
ちなみに修士までは極低温物性実験物理学を学びました。音楽の仕事が回り始め、博士過程の途中で物理学専攻は中退しましたが、30歳を過ぎてあるきっかけがあり、改めて入り直した総合文化研究科で音楽の認知的な基礎からの仕事で学位を得ました。
ご縁があって15年前に人事がある、現在のポストを新設してもらい、研究室を一から作りました。
最初に偽ベートーベン、これは語る価値がほとんどないので、少しだけにしますが、しばらく前に記者会見を開いたそうですね。
偽ベートーベンのあきれたシナリオ
偽ベートーベン氏は、なんと1人でホテル側と交渉して段取り、仕切っていたそうです。JBPressに書く価値がすでにないと思いましたので、触れずにおりましたが、これについてはテレビ朝日系列「モーニングバード!」からインタビューの依頼があり、少しだけテレビでもコメントしました。
私のスタッフは問題の記者会見にも出ており、打ち合わせでいろいろ聞いたのですが、全部1人で仕切っている偽ベートーベンは随所で耳が普通に聞こえているように見える反応で、現場にいた報道陣の話ではほとんどコミックだったそうです。
最前列で見ていたカメラマンなどはあまりにおかしく思わず本番中に噴き出してしまう始末。3時間半に及んだ会見とのことですが、最後はホテル側警備員に会場を封鎖させ、記者に追われないようにしたまま1人で逃げ出したそうです。
あわてていたのか、記者会見をしていた机の上には、別人の手になる「シナリオ」を忘れていったそうです。その中には、新垣君を悪者にするような演出のコンテのようなものが書かれていました。