「なぜ、レーダーから消えたのか」「同機(コックピット内で)に何が起こったのか」――。
南シナ海上空で“消えた”クアラルンプール発北京行きのマレーシア航空MH370便の消息は、さまざまな憶測が飛び交い謎が深まる一方で、事故から5日目に入った12日(日本時間夜)も、依然として機体の発見につながる肝心な手がかりが見つからず、捜索も難航している。
マレーシア政府の”迷走”に各方面からの批判が集中
そんな中、国際刑事警察機構(以下、ICPO)のロナルド・ノーブル事務総長は11日、盗難パスポートを所持し、MH370便に搭乗した2人がイラン人で、「情報が入れば入るほど、テロ行為ではないとの結論の方向に向いている」と述べる一方、異例と思われる発言を行った。
「中国政府は入手する情報を我々と共有する積極的姿勢を見せるが、マレーシア政府は協力的とは言えない」と、本来は同機の失踪状況把握や捜索活動のリード役を果たさなければならない立場のマレーシア政府の非協力的な姿勢を批判した。
この点については、事故機の搭乗者の3分の2を自国民が占める中国政府も事故当初からマレーシア当局の対応に懐疑的な姿勢を示していた。
捜索海域が中国が権益を主張する南シナ海域に近いことも動機の1つだが、それ以上に、昆明でのテロ事件の連鎖に対する警戒がある。その中で、警察と外務当局などの政府合同チームをマレーシアに派遣するとともに、海軍艦艇を筆頭にした大捜索布陣を展開してきた。海外で起きた外国籍機の行方不明の例では極めて異例のことだ。
その背景には、乗客の大半を占める自国の国民の保護という大命題だけでなく、全人代が開会している中、「テロの有無」を早期に判断したいという意向が働いている。また、事故後、マレーシア当局によるMH370便と連絡が途絶えたとの発表が同便の北京到着予定時刻の約1時間後だったことなど、初動から関係者や乗客の家族などへの情報提供、対応が後手に回ったことも影響している。
そんな中、中国政府も11日、マレーシア政府に対し「捜索活動を強化するよう要請」した上、中国外務省の秦剛報道局長も記者会見で、「国際的な捜索であるのに、実質的な進展はない」とした上、「マレーシアは捜索や救援を主導する必要があるが、その調整での主な責任も伴う」とマレーシア当局の姿勢を非難した。
ICPOや中国政府などの批判を受ける中、マレーシア当局は「全力を尽くし、捜索や情報提供に努める」と発表しているが、メディアの間からも、マレーシア当局の危機管理における情報提供の信憑性も含め、疑問や批判が噴出している。
これまで、事故機の消息やテロ、ハイジャック、機械的なトラブル、人的ミスも含めその原因を究明するための情報が提供されてきたが、それらの根拠となるべき重要な事実関係で“誤報”や“訂正”が相次ぎ、難航する捜索をさらに困難にさせている。