世界の航空業界に激震が走った──。

 10日、事故から3日目に入るが未だ何の手がかりもつかめない状況に、マレーシア民用航空局のアズハルディン・アブドル・ラーマン局長は、マレーシア航空MH370便が消息を絶ったことは「航空史上、前代未聞の謎」だと述べ、解明への糸口を見出せない苛立ちを露にした。

テロの可能性は高くない? さまざまな憶測が飛び交い深まる謎

南シナ海に油の帯、マレーシア航空「最悪の事態を恐れている」

マレーシア東岸とベトナム南部の間の海域の上空で、消息を絶ったマレーシア航空MH370便の捜索を行うベトナム軍の要員〔AFPBB News

 MH370便の機材である「ボーイング777」は、1995年就航以来、世界各国の航空会社に約1100機が販売され、中長距離の国際線を中心に採用されている。

 就航後の約20年間で、2008年1月に英国ブリティッシュ・エアウェイズ機がロンドンのヒースロー国際空港で不時着する事故があったほか、昨年7月に米サンフランシスコ国際空港で、韓国アシアナ航空機が着陸に失敗、同型機初の死亡事故も起きている。

 しかし、いずれも着陸時に発生したもので、上空でのトラブルによる“爆発(空中での機体分裂などを含む)墜落事故”と思われる事故は今回が初めてのケース。

 実は、消息を絶ったマレーシア航空機は、クアラルンプール-東京(成田)-ロサンゼルス間にも就航しており、2月28日から3月1日まで同区間を飛行した。仮に機体のトラブル等が原因とされるなら、日本人乗客も事故に巻き込まれていた可能性も否めない。早期の旅客機発見と乗客の救助、その原因追及が求められる。

 今回、乗客227人(中国や台湾からの154人、マレーシア人38人を含めた計14カ国)、乗務員12人の計239人を乗せたマレーシア航空のMH370便は、現地時間の8日午前0時41分(日本時間同1時41分)頃、クアラルンプール国際空港を離陸し、約3700キロ離れた北京に、同6時半到着予定だった。

 スウェーデンに拠点を置く航空探索レーダーなどが捉えたところによると、離陸して約50分後の8日午前1時30分ごろ、クアラルンプール近郊のスバン旧国際空港の管制当局との交信を最後に失踪。マレーシア当局によると、同機からは天候悪化やトラブルを伝える連絡もなかったという。

 消息を絶ったとされる南シナ海では、マレーシア、ベトナム、中国、フィリピン、シンガポールの航空機や船舶に加え、オーストラリアの最新海洋哨戒機や日本の基地から派遣された米海軍の偵察機、さらに、南シナ海で海上警備作戦を実施していた同駆逐艦1隻も加わって捜索活動を続けているが、10日現在(日本時間夕刻)、依然、旅客機の行方など消息は得られていない。

 また、これまで関係当局には未確認情報とされていた、ベトナム沖にあるトーチュー島海域で消息不明機から流れ出た可能性のある油のようなものや、機体の一部と見られる物体については10日、ベトナム軍がその事実関係を否定した。

 消息を絶つ直前には高度約3万5000フィート(約1万メートル)を安定飛行中だった同機は、忽然とレーダーから消えた。マレーシア空軍は「クアラルンプールに帰還しようとした可能性がある」とも指摘、突発的なトラブルに遭遇したとも見られている。