国家には品格が必要であり、根拠薄弱な言いがかりに無分別に対応する必要はない。しかし、我慢にも限度があり、あまりに執拗な言いがかりには敢然と対処しなければならない。

 2月25日付「読売新聞」(2014年)は驚愕の数字を報道した。中国の「南方都市報」の転載記事であるが、西南財経大学(四川省成都)の研究チームが貧富の格差を示す2013年のジニ係数は0.717であったとの調査報告書を公表したというのである。

 明朝や清朝末期のジニ係数をはるかに上回る数値で、端的に言っていつ革命が起きてもおかしくない状況を示している。中国があの手この手で日本追い込みを強めている要因の1つは、内政の混乱から人民の目を逸らす必要が一段と高まってきたためであろう。

 日本はこの数字が示す状況を知得して、孫子の「上兵は謀を伐つ」手法に活用するべきである。

「偽り」の数字

 ジニ係数は1に近づくほど貧富の格差が大きいことを表わし、先進国は基本的に0.2~0.3台(2010年:日0.329、独0.295、米0.378)で、0.4が警戒ライン、0.6は社会不安につながる危険ラインとされている。

 中国では年々暴動が増加し、昨年は20万件近いとの報道もある。国家の象徴的場所である天安門広場前での車両炎上や毛沢東の写真への汚損事案は衝撃的でさえある。

 北京大学の歴史学教授がかつて行った概算では、明末に李自成が農民反乱を起こした際のジニ係数は0.62、清末の太平天国の乱の際は0.58であり、現実に易姓革命につながった。20世紀初めの国民党政府統治期は0.53で、最終的には現在の共産党による統治に移行した。

 中国の国家統計局は2000年のジニ係数0.412を最後に発表しなくなった。そして2013年1月、12年ぶりに公表した2012年のジニ係数が0.474であり、今年1月公表の2013年ジニ係数は0.473ということである。

 昨年のジニ係数発表時、国家統計局長は2003年が0.479、2008年は0.491で最悪のジニ係数となり格差が最大となったとし、その後のジニ係数の低下から「所得配分の改革が進み、格差は縮小した」と強調した。

 この時、中欧国際工商学院(在上海)の許小年教授は実際の格差はさらに大きいという見方を示して、発表されたジニ係数は「偽りの数字だ」とコメントしている。

 西南財経大学の調査報告書は事実関係として「全世帯の10%を占める富裕層が中国総資産の63.9%を所有」(ちなみに米国の上位10%の富裕層は総資産の50.4%を占有)しているとし、米国の格差をも上回る規模になっている実態を明らかにした。

 しかし、報告書関連の報道はインターネット上で次々に削除されているそうで、読売新聞は当局が問題視している可能性を指摘している。