ドイツの再生可能エネルギー法は失敗だったのか?

科学的視点に欠けた脱原発推進がもたらす矛盾が次々表面化

2014.03.12(水) 川口マーン 惠美
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 また、1月31日には、EUの環境委員会の委員長、オッティンガー氏(ドイツ人)もBild誌のインタビューで、再生可能エネルギー法の見直しを主張している。助成金はあまりにも多くなり過ぎ、それを負担している一般消費者の電気代は、高騰しているばかりか、値上がりが止まる見込みもない。

 現在、電気を多く使用する企業は、国際競争力を落とさぬよう、助成金負担を大幅に免除されているが、それが、政府の不正な企業保護として、EUでやり玉に挙がってもいる。しかし、ドイツの企業に高い助成金を課すなら、多くが外国に出て行かざるを得ないことは火を見るよりも明らかだ。

 ドイツが産業国としての立地を捨てたら、残る物はない。それは、あってはならない事態なのである。

ドイツ人が気づき始めた現実

洋上風力発電で「ハリケーンを弱体化」、米研究

ドイツ・ボルクム島の沖合に設置された風力発電タービン〔AFPBB News

 これら諸々の難題を、ガブリエル大臣は解決しようとしているのだ。助成金は根本から見直すつもりのようだし、風力と太陽光発電の設備の新設には制限がかけられ、年間の上限がそれぞれ2500メガワットまでとされる。海上の風力発電だけは、技術投資の意味もあり、2020年までに6500メガワットを目標として建設を進めるという。

 その他に、まるで進んでいない送電線の問題もある。いくら電気が作られても、送電できず蓄電できずの現在の状況では、採算は取れない。たまたま太陽が照り、風も吹いた日には、でき過ぎてしまった電気は、ただで、あるいは、お金を払って外国に引き取ってもらっているような状態なのだ。ただ、これは余りにも難しいらしく、現在、具体的な目標が定められない状態だ。

 なお、さらに困るのは、いくら再生可能エネルギーの電気が増えても、すべてはお天気任せなので、結局は火力発電も減らせないことだ。

 シュレーダー前首相は、辞任後すぐに、ロシアからのガスパイプラインの会社の重役に納まるという汚職まがいのことをやってのけたが、今、彼の主張では、「どれだけ自然エネルギーが増えようとも、火力発電、特にガス発電の重要性は変わらない。だから、ロシアとは仲良くしなければいけない」。

 ドイツの電気は今でも45パーセント近くを石炭と褐炭に頼っている。これからは、ガスも増えるし、CO2の排出は確実に増加する。

 ドイツでは再生可能エネルギーが抜群に増えている。しかし、停止される原子力の代わりになるのは、基本的に火力であり、自然エネルギーではない。その現実に、ドイツ人は今ようやく気づき始めているところだ。

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川口マーン 惠美 Emi Kawaguchi-Mahn

 

大阪生まれ。日本大学芸術学部音楽学科卒業。

85年、ドイツのシュトゥットガルト国立音楽大学大学院ピアノ科修了。シュトゥットガルト在住。

 

90年、『フセイン独裁下のイラクで暮らして』(草思社)を上梓。その鋭い批判精神が高く評価される。『国際結婚ナイショ話』、『ドレスデン逍遥』(ともに草思社)、『母親に向かない人の子育て術』(文春新書)など著書多数。最新刊『サービスできないドイツ人、主張できない日本人』(草思社)好評発売中。ドイツから見た日本、世界をレポートする。

 

2011年4月より、拓殖大学 日本文化研究所 客員教授

欧州

欧州は観光ばかりでなく農業や地方の活性化、また少子高齢化対策などでも日本が学ぶべき点が多い。日本が課題とするこうした点を欧州ではどのように克服しようとしているのかの実例をお送りする。また、欧州で高く評価される日本の芸術・文化などのソフトパワーについてレポートする。

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