遊びに来た甥っ子たちがテレビも見ず、ご飯も食べずにiPadを熱心に覗いている。いったい何を見ているのかと尋ねると、「ほら」と言って見せてくれた画面に、スーパーマリオのゲームが映っている。

子供が熱中するゲームの実況動画

 彼らが見ているのは「実況動画」といって、素人の誰かがゲームをしている様子を動画で撮影してYouTubeにアップロードしたもの。YouTubeで実況動画を検索すると、20万件以上ヒットする。

 単純にゲームの様子を映している動画もあるが、中にはかなり凝った編集の動画もある。

実況動画に没入する5歳のヨッシー(写真提供:筆者、以下同)

 例えば、「ぬどん」さんという方は、テレビ番組のパロディ的な実況動画をたくさんアップしている。これが実に面白い。

 11歳の甥っ子リンタロウは、テレビよりそうした実況動画を見て育った。弟のヨッシーもソウタも。

 彼らにとって、いちばん身近な動画は、テレビ番組をネットにアップしたものではなく、ゲームの実況動画なのである。

テレビは無料の映像学校

 先日取り上げたVineのように(Vine:制約が生む名作と思考のダイジェスト化)、いまではスマートフォン(スマホ)でも動画の撮影と編集が行える。

 リンタロウも、最近凝っている「マインクラフト」というデジタル版レゴ(LEGO)のようなゲームの実況動画をYouTubeにアップするのが夢らしい。落語「たいこ腹」の若旦那が覚えたての鍼を試したくなるように、身近にツールがあれば、誰もがやってみたくなるのが人情である。

 「編集なんてできないよ」と思う大人もいるだろう。そんなときは、子供の頃見ていたテレビを思い返せばいい。テレビこそ無料の映像学校である。「ぬどん」さんの実況動画もテレビのパロディが随所に入っている。

 いままでプロは素人の作ったものをバカにしていたと思うが、映像だっていろんなカタチがあっていい。

 YouTubeには1分間に100時間以上の映像がアップされ、毎月10億人がその映像を視聴している(「YouTube Official Blog」より)。無数のスマホがカメラとして日常を切り取り続け、そのなかの一部が新たな表現として生き残るのだろう。