今回は、オーストラリアのキャンベラに来ている(2月20日記)。より正確を期すと、パプアニューギニアのポートモレスビー上空の、日本へと帰る日本航空の機内で書いている。

 ずいぶん南に来てしまった。一昨日いたシドニーでは夏の終わりを告げる雨に降られた。1月の夏休みを終えた人々が、心機一転、ちょうど仕事を再開したといった雰囲気である。キャンベラの夕暮れを抜ける風は、もう秋のにおいがする。ここでは、今日と同じ平和な日々がずっと続きそうだ。

 日本から遠く離れた方が、日本のことがよりよく分かることも多い。オーストラリアの知識人たちは筆者に対して、地球の南側から北東アジアを見ると、少しばかり違って見えることを教えてくれた。

 最初に感じたことは実に単純である。私たちから見ると、東アジア情勢に関してはオーストラリアの人々は、ずいぶん「奥歯に物が挟まった」話し方をするということだ。

中国から遠いパラダイス、オーストラリア

 シドニーとキャンベラの知識人たちと話を始めると、たいていの人が次のように言うのだ。

 「同盟国である米国とは、当然ながら協力を深めてきているし、アジアで台頭する大国の中国とも経済面で一層協力をしていく必要がある。もちろん、友好国の日本とも関係や交流を深めていきたい」

 やや皮肉めいた言い方をするならば、誰もが、上品ぶった外交官のようなものの言い方をする。実につまらない。

 とりわけ、オーストラリアの天然資源を大量に輸入してくれている、大得意のお客様である中国のことをないがしろにすることはできない。だから、オーストラリア人は、日本にも、中国にも、愛想がよい。