2013年末、中国のあるIT関連企業がこんなSOSを発した。

 「現場は人件費の高騰で厳しい状況が続いている。人手が足りない。このままでは旧正月も休み返上で出勤だ」――。

 この会社は日本から受注したデータ入力作業を行っているのだが、中国では人件費がうなぎのぼりに高騰し、業務遂行がいよいよ困難になってきたというのだ。

 これまで安定的に推移してきた中国のアウトソーシング(業務受託)ビジネスも、賃金の高騰、進行する元高、さらには労働者からの度重なる労働条件改善要望などで、これまで通りとはいかなくなった。

 日本のIT業界も「中国のみに依存することは危険」という認識から、東南アジアや南アジアへのシフトを強めている。尖閣諸島をめぐる日中の関係悪化は、中国に潜在するカントリーリスクをまざまざと突き付けた。

外国帰りの中国人IT技術者が活躍

 「アウトソーシング」を改めて説明すると、企業が自社の業務の一部を外部企業に委託し、その外部企業のリソースを利用することで経営効率を高める方法の1つである。

 日本のソフトウエア産業の場合、海外における最大のアウトソーシング先は中国であり、2001年前後から本格化したと言われている。その受け皿となったのが、日本語が堪能な留学帰りの中国人たちだった。

 パソコン1台あれば簡単に起業できる手軽さから、1990年代初めには小規模なベンチャー企業が続出した。現在、中国のソフトウエア産業の輸出先の6割は日本である。中国のIT業界の急速な発展は日本というパートナーを得たことの結果だと言えよう。

 2012年、中国のアウトソーサー(業務を受託する企業)は2万社を超え、約420万人が就業するまでとなった。ちなみに中国最大のアウトソーサーは“Pactera Technology International”(文思海輝技術有限公司)という会社だ。1995年の設立以降、金融、ハイテク、通信、エネルギー、製造など、様々な領域における受注をこなしている。