『ワイルド・スピード』シリーズ最新作の撮影が再開された。2カ月前、シリーズのコアとなる存在、ポール・ウォーカーを交通事故で失い、製作半ばで頓挫していた。

 2001年に始まる人気シリーズ最大の魅力は、改造車や非合法のストリートレースといった車とスピード。

死と背中合わせのスピード感に魅了される人たち

ラッシュ/プライドと友情

 フィリピンの台風被災者支援チャリティイベントからの帰途、元プロレーサーの友人が運転するポルシェ・カレラGTがロサンゼルスで自爆事故を起こしての死という現実が、人気シリーズの虚構とクロス、悲報はすぐさま世界中に広がった。

 スピードというスリルいっぱいの誘惑をはねのけることは容易ではない。「スピードのサーカス」とも呼ばれ、極限を追求するF1は大人気だ。

 低く沈み込んだ窮屈な空間に身を置き、むき出しのタイヤで時速300キロ以上の死の匂いさえ漂う世界でデッドヒートを繰り広げる姿を映し出す『ラッシュ/プライドと友情』(2013)を見ても、そのスピード感には魅了されてしまう。

 現在劇場公開中のこの映画が描くのは、享楽的な生活を送るプレイボーイ、ジェームス・ハント、理詰めに考える頭脳派ニキ・ラウダ、対照的な天才レーサー2人のF1チャンピオンの座を懸けた戦いである。

グラン・プリ

 1976年のシーズン、前半戦はラウダが独走していた。ところが、雨のなか強行された「世界一危険なサーキット」ニュルブルクリンクでのドイツグランプリでクラッシュ、ラウダは顔面や肺に火傷を負い戦線離脱を余儀なくされてしまう。

 そんななか、ハントはポイントを重ねていくが、6週間後、ラウダが奇跡の復活を遂げ、勝負は最終戦までもつれこみ・・・といった筋立て、と言うより、事実に基づいて撮られた作品だから、結末は多くの人が知っての通り。

 とはいえ、大画面大音量の臨場感たっぷりのレース映像は迫力十分、こうしたテーマの作品としては、ドラマ部分もよく練られているから飽きることもないだろう。

 チャンピオンを決した最終戦の舞台は、開催が危ぶまれるほどの雨に濡れた富士スピードウェイ、日本人にとって記念すべき日本初開催、アジア初開催の「F1(世界選手権)イン・ジャパン」だった。

 もちろん、アジアからのF1初参戦も日本。1964年のホンダである。『ラッシュ/プライドと友情』が登場するまで唯一無二のF1映画だった『グラン・プリ』(1966)にも、新規参入に燃える三船敏郎演じる日本人の姿がある。