対等の立場で守り合うのが本来の軍事同盟
井本 日本は米国を守らないが、米国は日本を守る。そのために日本に米軍基地を置くのを認めるという片務的な日米安保条約の賞味期限は切れた。双務的な対等の安保条約に変える必要があると?
日高 そうです。本来、対等の立場で守り合うのが軍事同盟。だから、同盟国が協力して敵に対処する集団的自衛権の行使など当然のことです。自分は戦わないで、守ってくれと言っても他国は動きません。まず国家は戦争するということを認める憲法にしなければ、米国民は相手にしませんよ。
井本 安倍政権は憲法改正を目指しています。集団的自衛権を行使できるようにしているのは、そのための第一歩ではないですか。
日高 一歩ではあるが、逆立ちの一歩だと思うんですよ。まず憲法を改正して、自衛隊も戦争するという前提にした組織に変えなければいけない。軍事裁判とか反逆罪とか、戦う組織としての法律も整備して。それが世界の常識です。それなしに集団的自衛権と言っても、国際社会では納得されませんね。
井本 特定秘密保護法を成立させ、日本版NSC(国家安全保障会議)も成立させましたが。
日高 それも憲法を改正しなければ小手先のことにしか見えません。日本版NSCの事務方のトップである国家安全保障局長を元外務次官の谷内正太郎氏にした点を見ても、軍事を軽視し、外交に偏っている印象を受けます。
井本 憲法改正には国会議員の3分の2の賛成が必要で、一朝一夕ではできません。
日高 それは分かるけれど、本当に改正に向けてヤル気があるのかどうか、まだ不明ですね。
井本 中国は南シナ海や東シナ海、西太平洋で勢力を伸ばしており、米国との軍事バランスが変えようとしています。それにより日本を心理的に屈服させようとしている、という見方もあります。
中国はそう簡単に東アジアを制覇できないが・・・
日高 ただ、米国では「そう簡単に中国は東アジアを制覇できない。中国周辺が安定していないからだ」という見方も有力です。
井本 不動産バブルの崩壊で中国経済がガタガタになるという見方ですか。
日高 私のいるハドソン研究所では「中国人は賢いから経済問題はうまく解決するだろう。現に中国政府は成長率を抑えて、バブル崩壊を起こさないようにしている」という声が強い。そうした国内問題ではなく、中国を取り巻く周辺国の脅威があるのです。