アメリカで接する東アジア軍事情報は、連日のように中国軍関係の話題が氾濫している。本コラムでも続けて中国軍事動向を取り上げざるをえないのであるが、その中国軍の覇権主義的拡張主義に対処すべく日米同盟を現場レベルで強化している努力に関しては、なぜか日本のメディアが取り上げていないようである。

派手さはないが実戦的な合同訓練

 2013年に引き続き、カリフォルニア州サンディエゴ郊外のアメリカ海兵隊キャンプ・ペンドルトンを中心にアメリカ海兵隊(第15海兵遠征隊)と陸上自衛隊(西部方面普通科連隊)の合同訓練が開催されている。

 1月23日から2月20日まで開催される日米合同訓練「アイアンフィスト2014」は今年で9回目となり、回数を重ねるごとに訓練内容はより実戦的になりつつある。初期の頃は、陸上自衛隊との合同訓練の機会が少なかったアメリカ海兵隊にとっては、陸上自衛隊との絆を深めるといったシンボリックな側面が重視されていたと考えられるが、中国海洋戦力が日米同盟に対して牙を向き出してきた昨今は、とりわけアメリカ海兵隊と陸上自衛隊の間の相互運用性の構築に向けて実戦を想定した訓練へと進化を遂げている。

 アイアンフィスト2014が開催されてから(本稿執筆段階で)1週間ほどの間には、日本のメディアが飛びつくMV-22Bオスプレイ中型輸送機を使用した高速移動訓練や、オスプレイ同様に中期防で購入が謳われているAAV-7水陸両用強襲装甲車での上陸訓練などの“派手”な訓練が実施されていないためか、日本ではあまり報じられていないようである(アイアンフィスト終盤には、訓練のまとめとしての合同上陸演習が実施されるため、その模様は“島嶼奪還上陸訓練”といった派手なタイトルで報道されるものと思われる)。

 しかしながらこの1週間でも、ヘリコプターからの降下着水上陸訓練、海兵隊威力偵察部隊との合同訓練、「ANGLICO」(海兵隊部隊に対する支援砲爆撃を統制するために海軍艦艇、海兵隊以外の部隊、多国籍軍や同盟軍などの外国軍部隊などに派遣されて効果的な砲爆撃をアレンジする海兵隊独特の高度な専門部隊)との合同訓練、強力な火砲の実射訓練、第一海兵師団学校での合同射撃訓練、ゴムボート・ナビゲーション訓練、その他各種技術の講習、といった具合に、日本のメディアにとっては“地味”で興味が湧かないかもしれないが、水陸両用戦能力、そしてアメリカ海兵隊的能力を身につけるためには不可欠な各種技能の合同訓練が実施されている。

120ミリ迫撃砲で高性能爆薬弾実射訓練中の陸上自衛隊(写真:海兵隊、以下同)