現在のベトナムに対する投資は、日本・韓国の2強によるマッチレースである。より正確には、韓国勢がずっとアグレッシブに投資を続けてきたなか、ここ最近、日本勢が少しずつ盛り返し始めていると言った方が正確だろう。

 実は、ベトナム人の対韓感情というのは、あまり良いとは言えない。それにもかかわらず、拡大する韓国のベトナム投資の状況を概観してみたい。

2013年のベトナムへの投資額は、韓国が実質1位、日本が2位

(出所:ベトナム政府統計局)

 2013年、日本からベトナムへの投資額は全体の1位。出光興産のギソン製油所(28億米ドル)など超大型案件があった。

 一方、韓国は、統計上は3位だが、実質的には1位だ。サムスン電子による投資額20億米ドルの携帯電話の新工場案件が、同社のシンガポール法人経由のため、統計上はシンガポールにカウントされているからだ。

 これ以外にも、サムスン電子の携帯電話工場(10億米ドル)、サムスン電機の携帯電話のIC・電子部品の製造工場(12億米ドル)、LG電子の生産拠点への投資(15億米ドル)などの大型投資があった。

 ベトナムにおける韓国のプレゼンスには目を見張るものがある。

 エレクトロニクスでは、サムスン・LGの前に日本勢がかなり劣勢を強いられている。特に、サムスン電子はベトナムをスマートフォン生産の一大生産拠点として位置づけ、近年、工場への投資を拡大している。

 同工場の2013年の輸出総額は約2兆5000億円、ベトナム全体の輸出に占める比率の15%以上を1社で担う(参照:「トヨタがベトナムから撤退する日」)。工場労働者のために、半径100キロ以内に毎日500台のバスを運行させていると聞く。

 日本人にはあまり知られていないが、ベトナムに進出した韓国企業の中で、最も従業員が多いのは泰光実業。「ナイキ」の下請けでスポーツシューズを生産しており、現在約4万人を雇用していると言われる。

 Kポップをはじめとする韓流文化の輸出戦略は、特に20代前半以下のベトナムの若者に浸透している。ベトナム人の若者に知っている韓国人女優を聞くと、次々に名前が挙がる。

 一方、日本人の女優を聞くと、残念ながら、いまだに「おしん」だ(おしんを女優というかはともかく)。