12月17日、安倍晋三内閣は国家安全保障戦略(NSS)を策定、防空識別圏(ADIZ)設定など膨張主義的挑発行為の目立つ中国や、強権ぶりが突出し続けている北朝鮮などを念頭に、「国際協調主義に基づく積極的平和主義」のもと、安全保障に必要な方針を打ち出した。併せて、新防衛大綱、中期防衛力整備計画も閣議決定された。

読み返しておきた「ビッグ・ブラザー」

訪日の米副大統領、「日中はより効果的なコミュニケーションを」

ジョセフ・バイデン米副大統領と記者会見に臨む安倍晋三首相(12月4日)〔AFPBB News

 その前提には、もちろん日米安全保障体制がある。

 しかし、その米国は、今年6月、NSA(米国家安全保障局)による個人情報収集活動などを暴露したエドワード・スノーデン元CIA(米中央情報局)、NSA(米国家安全保障局)局員を、「内部告発ではなく、機密情報の漏洩」として、スパイ活動取締法違反容疑などで訴追している。

 そして、その告発では、日本を含めた同盟国の大使館でさえ盗聴対象だったとされており、ドイツやフランスなどからも強い反発を受けている。

 「ヘイト・スピーチ」が社会問題となっているご時世だし、今回、NSSには「愛国心」も織り込まれ、特定秘密保護法も13日公布されたばかり。こうした世界の流れに、多くの人が、行き過ぎたナショナリズムや権威主義、そして、プライバシーの侵害への懸念を示している。

1984年

 そんな今だからこそ、読み返しておきたいのが、監視社会の代名詞とも言える「ビッグ・ブラザー」が登場するジョージ・オーウェルの超管理社会ディストピア(反ユートピア)小説「1984年」。結構な長編なので、翻案にはなるが、1956年、84年の映画版を見るのもいい。

 オーウェルは、東西冷戦構造が顕著となってきていた1947年から48年、この小説を執筆した。

 「ビッグ・ブラザー」の姿を映し出す双方向テレビ(テレスクリーン)が街中にある様は、個人崇拝を推し進める多くの国家にあふれる独裁者の肖像という現実に酷似している。

 いつ何時密告されてしまうかも分からぬ住民たちの姿には、冷戦時代の東欧各国で秘密警察に怯えていた市民が重なり、英米の反共主義者たちは好んでこの小説を引用した。

 小説の設定では、ロシアが欧州を、米国が英国を併合し、それぞれ、「ユーラシア」「オセアニア」となっている。少し遅れて中国や日本などからなる「イースタシア」が成立、生活レベルに大差ない3超大国は、敵味方を変えながら、以後ずっと戦争状態にある。