米国の大手報道機関で中国報道にあたろうとする記者たちに、中国政府が駐在査証(ビザ)を出すことを拒み始めた。この対応がついに米中両国政府間の最高レベルで議論されるにいたった。

 現状のままだと、米側大手メディアの記者たちが新たに中国への駐留ができなくなるだけでなく、すでに駐在している米人記者たち二十数人が、年末までには退去を余儀なくされる見通しとなってきた。いまの米中関係は多数の難問を抱えているが、さらに新たな摩擦が大きく浮上してきたことになる。

 中国政府が米国大手報道機関、ニューヨーク・タイムズやブルームバーグ・ニューズの記者の中国駐在ビザの新規申請に応じず、その理由を「それらメディアが中国政府にとって“好ましくない報道”をしているため」だと示唆している経緯は、このコラム(「ロイター記者、ブルームバーグ・・・、中国が外国メディアを狙い撃ち」)ですでに伝えた。

 ところがニューヨーク・タイムズなど米国の複数の大手報道機関によると、同紙とブルームバーグ・ニューズ社を代表してすでに中国に駐在している記者たち合計二十数人も、駐在ビザがこの12月末で期限切れとなり、その更新が認められない可能性が高くなってきた。普通は期限前の1カ月以内となったこの時期にはすでに更新が認められるが、今回は中国政府が更新拒否の方針をほのめかすようになったのだという。

記者追放に「議会から反発が起きる」と警告

 米側報道機関が報じたところによると、中国を訪問した米国のジョセフ・バイデン副大統領は12月5日の習近平国家主席との会談で、中国側の米国メディアへの抑圧に対する抗議の意を表明した。同副大統領は翌6日に北京で開かれた米国企業代表たちとの会合でも、「いまの世界では新聞が何事もその結果を恐れることなく報道できるのが普通だ」と述べ、中国政府に対する批判を明らかにした。

 バイデン副大統領はニューヨーク・タイムズとブルームバーグ・ニューズの北京駐在記者たちとも会見し、習主席に対して、公式会談と夕食会での懇談の両方の場で「結果的に米国の記者を追放するようなことがあれば、米側の、特に議会から反発が起きる」と警告したことを明らかにした。だが習主席は、「中国当局は外国人記者を中国の法律に基づいて扱っているだけだ」と答えるに留まったという。