バラク・オバマ米大統領のロシア訪問からほぼ1年が経った6月22~24日、今度はロシアのドミトリー・メドベージェフ大統領が、カナダ・トロントで開催されるG20の会合を前に、米国を訪問した。

 筆者は前回のオバマ訪ロを題材にして記事を書いたことがあるので、今回はメドベージェフ訪米の意義を考察したいと思う。

米ロの「リセット」ボタンは、若い大統領の間で友好的に押された

ロシア大統領が初「つぶやき」、米ツイッター社を訪問

アップルのスティーブ・ジョブズCEOからアイフォーン4を手渡されて喜ぶドミトリー・メドベージェフ大統領〔AFPBB News

 今回の訪米でメドベージェフ大統領は、初日にカリフォルニア州に降り立ち、アーノルド・シュワルツェネッガー知事と会ったほか、シリコンバレーを視察して多くのIT企業関係者から話を聞いた。

 現在モスクワ郊外のスコルコヴォで準備中の「ロシア版シリコンバレー」を成功裏に立ち上げるために、シスコシステムズをはじめいくつかの企業から同プロジェクトへの協力を引き出した。

 一方、ツイッターではメドベージェフ大統領の個人アカウントを開設してもらって初めて「つぶやいて」みたり、アップルではCEOのスティーブ・ジョブズ氏と面談してIT産業立ち上げの秘訣を聞いた。

ランチは一緒にハンバーガー、米露首脳 経済強調拡大で合意

ハンバーガー店で昼食を一緒に取る米ロの両大統領〔AFPBB News

 その後、ジョブズ氏から最新の「iPhone 4(アイフォーン4)」を譲り受け、シリコンバレーを発ってワシントンD.C.に入ってオバマ大統領らと会談した。

 ワシントンD.C.では、オバマ大統領と近郊のハンバーガー店で通訳のみを交えて昼食をともにするなど、若い大統領同士の友好関係を印象づけた。

 昨年のオバマ訪ロで提示されていた米ロ両国の関係改善のための「リセット」ボタンは、友好的な雰囲気の中、2人の大統領によって押されたように見えた。

 とりわけロシア側にとって今回の訪米は、メドベージェフ大統領の進める「近代化」政策に不可欠なイノベーションやハイテク分野の米ロ間協力を取りつけることに成功しており、訪米の所期の目的は十分に達成されたように思われる。

友好関係に冷や水を浴びせたロシア人スパイ摘発事件

 ところがそれから1週間と経たない6月28日、米司法当局は、米国内でロシア情報機関のために数年間にわたって「秘密諜報活動」を行っていたとされる容疑者10人を逮捕したと発表した(後に逃亡中の容疑者1人がキプロスで逮捕され、被逮捕者は計11人となった)。

 逮捕された者の中には、米国有数のソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)であるフェースブック上にアカウントを持つ者があり、魅力的なポーズを決めた写真が載せてあったことなどから、米国をはじめ世界中のマスコミの好餌となった。